薄明中から月が沈むまで、月の夜側全体を撮影し続けてください。連続した撮影であれば、動画と写真、どちらでも構いません。撮影時の主な方法や注意点は次の通りです。
<撮影前>
・カメラや撮影用PCの時計を秒単位で合わせてください。PCの場合は、一定時間ごとに時刻サーバーと同期させるとよいです。実際の時刻からずれてしまった状態で撮影した場合は、なるべく撮影から時間が経たないうちに、実際にどのくらい時間がずれていたのか、確認してください。
・月没まで数時間かかる日は、バッテリーが内蔵タイプの機器では電源が持たない可能性があります。AC電源を使うか、バッテリーが持つかどうか、事前テストを行うとよいかもしれません。
・データの保存容量にも気を付けましょう。なるべく圧縮がかかっていないデータが望ましいですが、保存できなければ観測結果を残すことができません。単位時間でどのくらいのデータが発生するのか、事前に確認しましょう。
<機材>
・月を拡大するための望遠鏡やレンズ、追尾するための架台、撮影用のカメラを用意してください。
・望遠鏡やレンズは口径10cm以上が望ましいです。感度の高いカメラを使うと、より小型の光学機器でも撮影できるかもしれません。
・F値が小さい、明るい光学系ほど、衝突閃光を捉えやすいです。長焦点の光学系はレデューサーなどで縮小したほうが写りやすくなります。
・カメラは連続的に撮影できればどんな機材でもよいですが、より高感度なカメラがおすすめです。デジタル一眼レフやミラーレスカメラ、惑星撮影用のUSBカメラなどがよいでしょう。
・デジタルカメラは録画時間の上限が定められている場合もあるので、注意してください。ある程度区切った方が、あとから確認がしやすいかもしれません。
・架台は赤道儀と経緯台、どちらでも構いません。経緯台は視野が回転しますので、月の夜全体が写り続けるように、カメラの画角を回転させてください。手動追尾でも、月が常に視野に入り大きくぶれていなければ、閃光の有無を確認できます。
<撮影>
・淡い閃光を写すため感度(GainやISO)を上げ、連続して撮影してください。一方で、ノイズまみれになるほど感度を上げると閃光を見つけづらくなるので、あまりざらざらしない程度に留めてください。
・フレームレートを遅くし露出時間を長くすると、月や地球照の明るさに淡い閃光が埋もれてしまいます。できるだけ短く設定してください。ただし、記録媒体にデータ転送可能な時間よりも速いフレームレームレートに設定すると、一部のフレームが抜け、肝心の閃光を逃してしまう可能性があります。事前に人工衛星などの移動天体を撮影してフレーム抜けがないか確認するか、明るい天体を導入した後に画角を動かしながら撮影し、フレームの抜けが起こるか確かめるとよいでしょう。
・観測の合間に、地球照がはっきり写るようにやや露出をかけた写真を撮影しておいてください。あとで衝突閃光の位置決定に役立ちます。
・惑星撮影用のUSBカメラは、SharpCapなどのキャプチャソフトを使い、TIFF形式やSER形式で保存すると、後から衝突閃光の画像だけ抜き出しやすいです。
・ガンマ補正やHDR補正がないほうが解析しやすいですが、昼夜境界線に近いところは飽和してしまい、月の夜の観測面積は少なくなります。状況に応じて設定してください。
・カメラの感度や露出時間を固定し、ガンマ補正などを行わない設定で撮影できる方は、散開星団などを全く同じ条件で撮影しておくと、既知の恒星の明るさを利用して閃光の測光観測ができます。今回の協働観測では、主に衝突閃光の有無を調べる予定ですが、特徴的な閃光が起こった場合、貴重なデータになる可能性があります。
<Seestar S50での撮影>
・最近広く活用されている、Seestar S50などのスマート望遠鏡でも、月面衝突閃光を捉えられると思われます。
・Seestar S50で動画撮影される場合は、通常の方法で月を導入すれば、安定的に追尾ができます。動画の設定は手動設定にして、ゲインは最大の300、露出時間は50m秒程度が良いようです。通常のビデオ撮影(mp4)は最大1時間40分ほど連続撮影できますが、圧縮率が高いです。一方でRAWモードで撮影すると、観測時間が最大10分に限られ、保存されるデータも十数GBになり、すぐにSeestar S50に保存できるデータ容量を超えてしまいます。mp4での撮影をオススメします。
・観測の合間に地球照がはっきり写るようにやや露出をかけた写真を撮影しておくと、位置特定をできるかもしれません。