月面衝突閃光 協働観測キャンペーン
流星観察会 月面衝突閃光協働観測キャンペーン
月面衝突閃光とは
宇宙を漂う小石や砂粒は、流星物質や流星体と呼ばれます。地球は厚い大気に守られているため、流星物質は流星現象として光って大気中に消え、隕石として地上まで到達することは滅多にありません。しかし大気を持たない月では、小石がそのまま月面上に衝突し、クレーターを形成します。衝突速度は秒速11kmから72kmにも達し、衝突のエネルギーによって一瞬の光を放ちます。これが月面衝突閃光です。
閃光には、衝突で発生する雲からのプラズマによる輝線と、高温になった月面からの黒体放射による連続光の、2種類の光が混ざっていると考えられています。
2019年3月11日20時54分48秒の月面衝突閃光(1/10倍速で再生)
明るさと継続時間
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月面衝突閃光の明るさは5等~10等級程度で、継続時間は通常0.01〜0.1秒程度です。もととなった流星物質のサイズは直径数cm~数十cmで、生じるクレーターの直径は数十cmから数mだと考えられます。ごくまれに明るい閃光が観測されることがあり、2013年9月11日にスペインで観測され月面衝突閃光は、最大の明るさが約3等、継続時間が8秒間もありました。このとき直径1m、質量400kgほどの流星物質が衝突したと推定され、後日、NASAの月探査機LROによって直径34mのクレーターが形成されたことが確かめられました。
観測に適した月齢
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月の昼側は太陽光が降り注いで明るいため、月面衝突閃光の観測は難しいです。月の夜側で観測する必要があり、閃光を観測できるのは半月までの期間に限られます。具体的には、夕方の月は新月から上弦の月頃までの月齢2から8くらい、明け方の月は下弦の月から新月前までの月齢23から28くらいが最適な観測条件となります。ただし、上弦を過ぎた月や下弦前の月でも、根気強く観測を続ければ 閃光を捉えることが可能です。
観測の目的
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月面衝突閃光観測には、様々な目的があります。
・大きな流星物質の分布調査
地球上のある1カ所から観測した場合、流星が見える範囲は半径数百km程に限られます。一方で月の場合は、地球から見える表側の夜全体を観測できます。月を流星の検出器として使えば、地上の単地点観測では得られない、広大な視野を1台のカメラで効率的に観測することができます。
・クレーター形成過程の解明
クレーターは岩石惑星の基本的な地形です。しかし、クレーターを地上実験で完全に再現することは難しいです。月面衝突閃光と月震計や、月の周回衛星と協働して観測できれば、クレーターの形成過程や月の内部構造に迫ることができます。
・月面開発へのリスク評価
現在、世界各国の宇宙機関や民間企業が協働で月面開発を進めています。月面衝突閃光の頻度や衝撃の大きさがわかれば、月面基地の設計や運用に生かすことができます。
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