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平成14年度平塚環境ポスター・作文コンクール 優秀賞 
「水辺の楽校で学んだこと」   江陽中学校2年 水上 淳貴

 「ビオトープ」
 この言葉をどれだけの人が知っているだろうか。僕が知ったのは、1年前だ。「ビオトープ」とは、ドイツ語で、生物が生きていく空間という意味だ。いろいろな生物が住めるようになっている場所のことを言う。僕達のすぐそばにさまざまな生き物達が、たくさん暮らしていた。そして、その場所にふさわしい、たくさんの生き物達が、自然を創っていたのだ。しかし、現在なかなか自然を体験することはできない。そんな中、今回僕の身近に馬入水辺の楽校が設立され、河川ビオトープとして生まれ変わっていく様子を自分の目で見ることができた。僕は平塚市博物館の「水辺の楽校生きもの調べの会」に参加して、定期的な観察をしてきた。これからどのように変化したのか、紹介する。
 水辺の楽校はあらゆる世代の人々が四季を問わず自然とふれあい、遊びややすらぎを体験し自然を学べるような場所をめざして創られた。設立される前は、部分的に違法耕作に使われたり、粗大ゴミの不法投棄があったり、違法駐車があったりして相当荒れていた川原だったらしい。2000年の12月頃から工事が始まり、敷地内に水を引いて、小さな水路を作り、トンボ池や中州、ワンドを整備した。そして、2001年4月にオープンした。出来上がった水辺の楽校は、荒削りで土がむき出しの荒地のままの状態だった。2001年5月、土がむき出しだった所に草が徐々に生え始めた。以前とあまり変わらない生き物が確認された。2001年7月、たくさんの草が生えてきた。原っぱにはショウリョウバッタが住みついていた。水路にはクロベンケイガニが現れるようになった。2001年10月、夏に青々としていた草はかれ、エノコログサの穂が風にゆれていた。トンボ池の周りには、その名のとおり、トンボが飛んでいた。相模川沿いにはアシを中心にススキ、クズが茂っていた。2002年5月、ワンド周辺でアシが茂り、上流部のワンドには淡水性の水草や藻が生え始めていた。下流部のワンドには水生植物は確認できなかった。上流部下流部ともにハゼ科の稚魚やボラ科の稚魚、テナガエビ、スジエビがいた。河口部では、アカテガニ、クロベンケイガニ、ベンケイガニ、アシハラガニ等が岸辺に穴を掘って生息していた。2002年8月、風にオギがゆれ、草が生い茂り、りっぱな原っぱとなっていた。ワンドの泥の中にはヤマトシジミが観察され、トンボ池では藻の中にヤゴ、泥の中にドジョウ、ウシガエルのおたまじゃくし、アメリカザリガニがいた。カニの生息地が拡大し、いたる所で見られるようになった。鳥類はウ、チュウサギ、コアジサシの他ミサゴの姿が見られた。
 今夏、観察会に参加して気になることがあった。それは移入種の事だ。移入種は在来の生物多様性に影響をおよぼすと言われている。水辺の楽校でも影響がでていた。特に、シロツメクサに関しては以前は生えてなく、今年は、原っぱを一掃していた時期があったほどだった。幸い木立や川岸では在来種が勝っていた。生き物ではワンド、トンボ池にウシガエル、アメリカザリガニが住みついていて、ヤゴなどが食べられてしまっている。他地域からの動植物を安易に移入、移植すれば、在来の生物と交雑して、一帯の生態系に深刻な影響を与えかねないので注意が必要だ。
 開校以来、水辺の楽校での自然体験イベントや観察会に参加して、本来、その地に生活していた生物達をも含め、自然が豊かになったことを見れたことは、僕にとって大きな意味があった。多様な野生生物が生息している場所では、自然の循環がスムーズに行われている。そのような空間は、人間にとっても快適なはずだ。そしてただ「緑を増やすだけ」という、本来の自然の植生や生物の生活場所を無視した自然保護は、間違っていると考えるようになった。見かけだけが美しい自然ではなく、日常、触れあえ、体験できる生活圏内の自然を持つことが大切だ。多様な生物と共生した豊かな地域社会は、かけがえのない財産となる。僕はこれからも植物、昆虫、魚、鳥などいろいろな生物の知識を深め、観察を通して自然の仕組みや共生の方法を学んでいきたい。

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