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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第263回 2015年1月18日 鎌倉市今泉~北鎌倉



■ テーマ:天園ハイキングコースと亀ヶ谷切通の地層
■ コース:鎌倉市今泉 半僧坊下バス停~天園ハイキングコース~建長寺~亀ヶ谷坂~海蔵寺~葛原ヶ岡ハイキングコース~浄智寺~北鎌倉駅

 今回の巡検の目的は、三浦層群逗子層・池子層と上総層群浦郷層を観察し、各地層の特徴をつかむこと、三浦層群と上総層群の境界で黒滝不整合を探すこと、遠方の地形を展望し鎌倉の盆地状の地形を理解すること、でした。
 最初に観察したのは、半僧坊下バス停近くでみられた軽石混じりの泥質砂岩層からなる浦郷層の露頭でした。今泉台6丁目の公園から天園ハイキングコースに出て西へ進むと、勝上献展望台まで凝灰質泥質砂岩層の浦郷層が続きました。勝上献展望台では鎌倉の地形から、遠く大島、伊豆、箱根、富士、丹沢までの地形を展望しました。半僧坊東の露頭では浦郷層の軽石質細粒砂岩層を観察しました。下位の三浦層群池子層との境界が近くなったため岩相が粗粒になったのではないかとのことでした。半僧坊から約10 m下がったところの露頭は浦郷層より軽石が少なく、岩相もきめ細かい泥質砂岩層あるいは砂質泥岩層で池子層と考えられるとのことでした。さらに約8 m下った地点ではよりきめの細かく、わずかに砂の混じる泥岩層の露頭に変わり、深海性の堆積物とされる逗子層だと分かりました。
 長寿寺の脇を通って亀ヶ谷切通に入ると、切通の両壁は、火山灰を含まない泥岩を主とした逗子層でした。亀ヶ谷坂を下り、浄光明寺裏手の露頭は、軽石、スコリアが混ざった泥質砂岩層でした。地質図(江藤ほか, 1998)によると池子層でした。池子層が逗子層と隣り合わせて出てくるのは断層によるためとのことでした。海蔵寺付近の露頭はいずれも軽石混じりの泥質砂岩層で池子層でした。扇ヶ谷四丁目の住宅地を抜けて山道を登り、葛原ヶ岡ハイキングコースまでの露頭は浦郷層と考えられる凝灰質砂岩層でした。途中には、生痕化石や斜交葉理(水の流れによってできた地層中の縞模様)が見られる露頭がありました。ハイキングコースを北鎌倉駅に向かう途中の地点は火山灰を含まない砂質泥岩層で逗子層でした。さらに下った浄智寺駐車場奥の露頭は凝灰質砂岩層で浦郷層に似ていました。
 半僧坊下バス停から建長寺までは、地層を上位(浦郷層)から下位(池子層、逗子層)へと見ることができ、各地層の特徴も解りました。しかし黒滝不整合に相当する侵食面や基底礫層などは確認できませんでした。観察した狭い地域で逗子層から浦郷層までがめまぐるしく繰り返すのは、断層によるとのことでした。このコースでは多くの露頭が観察でき、天園ハイキングコースからは素晴らしい眺望が楽しめました。(F. S.)

文献:
・江藤哲人 ・矢崎清貫・卜部厚志・磯部一洋(1998)横須賀地域の地質.地域地質研究報告(5 万分の 1 地質図幅),128p,地質調査所. 
                    

出発前に今回の目的、コースについて説明するを聴く<FONT size="+1" face="Century">(今泉台5丁目 半僧坊下バス停前) 軽石質な泥質砂岩層からなる浦郷層の露頭(天園ハイキングコース)
▲出発前に今回の目的、コースについて説明を聴く(今泉台5丁目 半僧坊下バス停前) ▲軽石質な泥質砂岩層からなる浦郷層の露頭(天園ハイキングコース)
浦郷層の露頭を観察する(天園ハイキングコース) 十王岩から横浜方面の地形を眺望する(天園ハイキングコース)
▲浦郷層の露頭を観察する(天園ハイキングコース) ▲十王岩から横浜方面の地形を眺望する(天園ハイキングコース)
勝上献展望台から富士山の方面を望む 逗子層の泥岩からなる大露頭を観察する(建長寺 半僧坊の下)
▲勝上献展望台から富士火山の地形を観察する ▲逗子層の泥岩からなる大露頭を観察する(建長寺 半僧坊下)
軽石質な凝灰岩層を挟む泥岩層からなる逗子層 亀ヶ谷切通の側壁に露出する、泥岩からなる逗子層を観察する
▲逗子層の泥岩層中には軽石質な凝灰岩層がみられた(建長寺 半僧坊下) ▲亀ヶ谷切通の側壁に露出する、泥岩からなる逗子層を観察する
軽石質凝灰岩を挟む池子層の露頭を観察する。(海蔵寺 山門脇) 池子層中に見られた生痕化石(写真右下)(葛原ヶ岡ハイキングコース入口付近)
▲軽石質凝灰岩を挟む池子層の露頭を観察する(海蔵寺 山門脇) ▲池子層中に見られた生痕化石(葛原ヶ岡ハイキングコース入口付近)


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