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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録
第261回 2014年11月23日 秦野市曲松~頭高山
■ テーマ:頭高山:渋沢断層の地形と第三系
■ コース:秦野市曲松~萩が丘~千村~渋沢~渋沢丘陵~頭高山
今回の目的は、秦野市南部を歩き、地形と地層を観察しながら、渋沢断層の活動と地形の関係を理解することでした。
渋沢断層は秦野盆地と大磯丘陵を境する逆断層で、秦野市の南を東西に走っており、曲松から千村には、その分岐断層(スプレー断層)が走っているとのことです。渋沢駅から南西に150mほどの交差点では、スプレー断層の断層崖がみられました。そこから西側へ向い、道路の南側の階段を上ったところに、断層で隆起した地形面がみられました。この面は、約6
万年前に箱根火山から噴出された火砕流である箱根新期軽石流堆積物(TP flow)によって形成された段丘面(中位面)とのことで、道路からの比高は10mでした。荻が丘の坂道を登ると、この面は山側へ逆傾斜しており、渋沢断層が逆断層である証拠となるとう曲である、と先生から説明がありました。また、そこより南側にある渋沢小学校の西側には、校舎の建つ中位面より15mほど高い段丘面が観察でき、高位面と考えられるとのことでした。
渋沢断層に沿うように流れる室川周辺では、室川の沖積面、低位面、中位面が観察できました。沖積面と低位面の比高は約2.5m、低位面と中位面の比高は約12
mでした。室川を渡り、渋沢断層をまたいだ南側にある渋沢丘陵(大磯丘陵)北縁の中位面は住宅地となっていました。この面は断層をまたいだ北側の中位面より6
mほど高い位置にあり、渋沢断層による南側の隆起の影響がみられたものの、それにしては高度差が小さすぎるように思えました。住宅地を抜け大磯丘陵を南に上り始めたところで、北に広がる丹沢の山々や秦野盆地を一望しました。またこの山道には、基盤をなす粗粒凝灰岩層からなる丹沢層群と、その上位に重なるスコリア質な新期ローム層の露頭が露出していました。ローム層にTP
flowの狭在が確認できれば、断層より南側の中位面との高度差から、渋沢断層の変位量が推定できるとのことだったのですが、残念ながら露頭でTP
flowを見つけることはできませんでした。山道を上り詰めると、平坦な高位面に出ました。尾根の南側には一段低い中位面も観察できましたが、尾根には川が流れた跡のような谷地形もなく、なぜこれらの平坦面が形成されたのか、不思議に思いました。高位面に沿った尾根道を、頭高山を目指して西に進むと、途中で再び地形展望ができる開けた場所に出ました。ここでは北側の丹沢山地や秦野盆地、特に四十八瀬川や水無川が作った扇状地の地形がよく遠望できました。
頭高山の入口付近では基盤となる丹沢層群の火山礫凝灰岩の露頭がみられました。頭高山山頂では地形展望が期待されたものの、木が茂っていたため何も見ることができませんでした。帰路、若竹の泉の湧水を観察して渋沢駅へ戻りました。
ローム層中のTP flowを観察できませんでしたが、素晴らしい地形展望ができた点、渋沢断層付近のとう曲を発見できた点など、収穫もありました。(A.N.
& S. M. )
▲道路の左(南)側にそびえる渋沢断層の分岐断層の断層崖(秦野市萩が丘) | ▲階段の上の平坦な中位面は、箱根火山からの火砕流(TP flow)によって形成された(秦野市萩が丘) |
▲渋沢断層の分岐断層のとう曲によりわずかに道路が南に傾いている(秦野市千村) | ▲渋沢小学校が建つ中位面と、その西側にみられる高位面(秦野市千村 渋沢小学校前) |
▲渋沢断層に沿うように流れる室川とその沖積面(秦野市渋沢) | ▲渋沢丘陵の山道から、表丹沢の山々やその南の秦野盆地を望む(秦野市渋沢) |
▲渋沢丘陵の山道沿いに露出する、丹沢層群の粗粒凝灰岩層(秦野市渋沢) | ▲丹沢層群を覆う新期ローム層の露頭の位置を、地図で確認する(秦野市渋沢) |
▲富士山宝永噴火による宝永火山灰中の軽石が黒土の中にみられた(秦野市渋沢) | ▲渋沢丘陵をなす山の尾根に広がる高位面と、その南の中位面(秦野市渋沢) |
▲尾根沿いの山道から丹沢山地や秦野盆地の地形を遠望する(秦野市渋沢) | ▲頭高山へ通じる山道で、丹沢層群の火山礫凝灰岩層の露頭を観察する(秦野市渋沢) |
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