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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録
第257回 2014年7月20日 ヤビツ峠~菩提
■ テーマ:表丹沢の地層と地形展望
■ コース:秦野市寺山ヤビツ峠~菩提峠~菩提林道~小玄台管理道~菩提
今回は、丹沢を作っている丹沢層群がどのような地層からなっているかを観察すること、秦野盆地の地形を表尾根から見ることが目的でした。小田急線秦野駅前からバスでヤビツ峠に向かいました。まず、ヤビツ峠に到着後、目的や行程などについて説明を受けたのち、目の前の露頭で、古富士起原の関東ローム層中にある姶良-Tn(丹沢)火山灰(AT)について解説がありました。ATは、都立大学(現、首都大学東京)にいられた町田
洋先生が、このヤビツ峠で最初に見つけた真白な火山灰を丹沢パミスと名づけ、同質の火山灰を追い求めた結果、鹿児島県の姶良カルデラを作った大規模火砕流(入戸火砕流)と同一のものであることが、明らかになったことから、姶良-丹沢火山灰と命名されたといういきさつを森先生から伺いました。この露頭では不明瞭でしたが、桜沢林道に入ってから2箇所でATを観察することができました。いずれも1cmほどの団子状態で黄白色の細粒火山灰が散在している状況でした。鹿児島湾を形成した日本で最大の巨大噴火の噴出物を見ることができ、興奮しました。
菩提峠の広場には国土地理院の基本電子基準点が設置されていました。全国に1,300箇所配置されGPSにより正確な位置情報を供給しているそうです。広場から100mほど菩提林道を下ったところで南側の展望が開けてきました。先生より、秦野盆地の地形、秦野盆地と大磯丘陵を境する渋沢断層崖、大磯丘陵西部の高まりをなす曽我山の丘陵と国府津-松田断層との関係、大磯丘陵と足柄山地の境をなす川音川断層の地形などについて説明を受けました。林道沿いにはさらに下ったところからも秦野盆地の地形がよく眺望できました。
地形展望地点から100mほど菩提林道を下ると、透輝石を含んだ玄武岩溶岩の露頭があり、さらに150mほど下ると、斑状玄武岩の溶岩が露出していました。この付近は丹沢層群・大山亜層群の本谷川層中の菩提火山角礫岩にあたり、海底火山の本体に近いことがうかがわれました。さらに林道を下ると、粗粒凝灰岩と細粒凝灰岩からなるタービダイト(乱泥流)が互層をなす凝灰岩が認められました。桜沢林道を経て、南に延びる尾根を南下する登山道(小玄台管理道)に入ると、著しく風化した凝灰岩が多く見られ、一見するとローム層と間違えそうでした。道の一部には、溶岩流の末端が海水で冷やされて破砕して生じたハイアロクラスタイトや土石流となって海底斜面を流下したデブライトがみられました。これらの角礫岩の見分け方を先生に教えていただきました。丹沢山地を作っている凝灰岩の大部分はタービダイト、デブライト、ハイアロクラスタイトが主体となっているとのことで、ハイアロクラスタイトや溶岩は火山体に近いことを示しています。
菩提の新田集落の近くでは乳白色の厚さ1mほどのデイサイト質細粒凝灰岩や、デイサイト質軽石凝灰岩の露頭が見られました。後者は火砕流堆積物で、デイサイト質の凝灰岩は玄武岩火山と異なる珪長質な火山が存在していることを示しているとのことです。
丹沢山地を作る表丹沢の地層には玄武岩質とデイサイト質の火山活動があったこと、近くに火山体の存在を示す溶岩やハイアロクラスタイトが認められたことなど、丹沢が海底火山から生まれた証拠を目の当たりに見て、大変有意義でした。(K. Y. & S. M. )
▲菩提峠広場に設置されている国土地理院の基本電子基準点 GPSを利用して位置情報を提供 | ▲秦野盆地、渋沢断層崖、曽我山と国府津-松田断層、足柄山地、川音川断層の地形を展望(菩提林道 菩提峠南西) |
▲本谷川層中の透輝石を含む玄武岩溶岩の露頭(菩提林道 菩提峠南西) | ▲露頭の岩種の見分け方、岩石の成形の仕方を教わる(菩提林道 菩提峠南西) |
▲菱沸石脈を含む斑状玄武岩溶岩の露頭を観察する(菩提林道 菩提峠南西) | ▲粗粒凝灰岩と細粒凝灰岩からなるタービダイト(乱泥流堆積)の互層を観察する(菩提峠南西) |
▲著しく風化した凝灰岩の上にのる崖錐堆積物(凝灰角礫岩)を覆う新期ローム層の露頭(小玄台管理道) | ▲海底土石流によってできたデブライト露頭を観察する(小玄台管理道) |
▲古富士からもたらされた新期ローム層中にあるAT(姶良-丹沢火山灰)を観察する(小玄台管理道) | ▲火砕流堆積物であるデイサイト質軽石凝灰岩露頭(小玄台管理道) |
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