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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録
第249回 2013年11月16日 鎌倉七口(釈迦堂口切通・朝夷奈切通)
■ 鎌倉七口と上総層群
■ コース:釈迦堂口切通~浄妙寺~十二所~朝夷奈切通
今回は、鎌倉市東部に露出する中新統-鮮新統である三浦層群逗子層(泥岩)と池子層(砂岩層を多く狭在する砂質泥岩)、鮮新統-更新統である浦郷層(砂岩層を多く狭在する泥質砂岩)と野島層(砂質泥岩)の観察を行いました。出発前に先生より、「過去の研究では三浦層群と上総層群の境界層準(黒滝不整合)が朝夷奈切通に露出しているとされています。近年の研究では三浦層群と上総層群を境する黒滝不整合が三浦半島では存在しない可能性があり、実際にそれを現地で観察しましょう」との説明がありました。
釈迦堂切通から朝夷奈切通にかけての地域では、逗子層と池子層の露頭が観察されました。また浄妙寺5丁目の露頭では、軽石やスコリアや岩片を多く含む厚さ約4
mの砂礫岩層が観察されました。この露頭がみられる地点は見上・江藤(1986)の地質図では池子層に、江藤ほか(1998)の地質図では鷹取山砂礫岩層に区分されており、研究者毎に見解が異なっていることがわかりました。朝夷奈切通に通じる山道では、池子層と浦郷層の露頭がほぼ連続的に露出していました。黒滝不整合とされる地点周辺では層厚数十
cmの砂礫岩層が観察できましたが、この砂礫岩相を境に上下の地層で明瞭な岩相変化や構造の違いは観察できませんでした。浦郷層には鎌倉ガーネットパミス(KGP)と呼ばれる、ザクロ石(ガーネット)を含んだ特徴的な凝灰岩鍵層が狭在することがわかっており(稲垣ほか,
2007)、朝夷奈切通の浦郷層でも見られないかと露頭を探しましたが、残念ながら見つけることができませんでした。浦郷層中の露頭では、斜交層理が顕著な砂岩層が観察され、先生が斜交層理から古流向を推定した結果、北東方向の古流向が推定されました。
以上の観察から、朝夷奈切通の露頭には黒滝不整合に相当する明瞭な浸食面や厚い基底礫層は観察されず、池子層と浦郷層が整合一連であることが推定されました。 (A.
N. )
文献:
・稲垣 進・西川達男・満岡 孝・安野 信(2007)神奈川県鎌倉市北東部の上総層群下部から発見された含ザクロ石軽石層(KGP)について.
地球科学,61,143-148.
・見上敬三・江藤哲人(1986)鎌倉市の地質.鎌倉市文化財総合目録,地質・動物・植物 編,1-74,鎌倉市教育委員会.
・江藤哲人 ・矢崎清貫・卜部厚志・磯部一洋(1998)横須賀地域の地質.地域地質研究報告(5
万分の 1 地質図幅),128p,地質調査所.
▲浄妙寺5 丁目にある三浦層群池子層の砂礫岩層の露頭。 | ▲左の露頭の接写。礫層には軽石・スコリア・岩片・チャートなどが入る。 |
▲朝夷奈切通入口付近の池子層中に挟まれる縞状をなす軽石質凝灰岩層。 | ▲池子層の露頭を観察する。 |
▲朝夷奈切通の入口とそこに露出する池子層。 | ▲黒滝不整合と思われる層準を探す。 |
▲黒滝不整合と思われる浸食面とその直上の砂礫岩層。不整合らしき様子は見えない。 | ▲朝夷奈切通で鎌倉ガーネットパミスを探す。 |
▲朝夷奈切通に露出する上総層群浦郷層の露頭を観察する。 | ▲上総層群浦郷層にみられる、水の流れでできた堆積構造(斜交層理)。 |
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