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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第237回 2012年11月 4日 鎌倉七口(極楽寺切通・大仏切通)



■ テーマ:鎌倉七口の地形と黒滝不整合
■ コース:鎌倉市極楽寺切通~大仏切通~佐助稲荷神社~銭洗弁天~化粧坂

 鎌倉七口は、鎌倉時代に人工的に切り開かれた道で、一般に極楽寺切通、大仏切通、化粧坂切通、亀ヶ谷坂、巨福呂坂、朝比奈切通、名越切通を指します。三方を山に囲まれた鎌倉において、軍事的要塞としての機能を残したまま、山向こうの地域との交通の便を図るため、山を最小限度だけ切り取られて作られており、狭く険しい道が特徴的です。今回は鎌倉七口のうち、極楽寺切通、大仏切通、化粧坂切通の地形と地層の観察を、往時の面影を偲びつつ行いました。
 まず極楽寺切通では成就院前の高台から泥岩からなる三浦層群逗子層の露頭を観察しました。ここには、50 cmほど地層をずらした正断層が見られました。極楽寺から笛田へ向かうトンネル入口では、三浦層群の上位を占める上総層群の浦郷層と考えられる露頭を観察しました。トンネルを抜けた東側は逗子層の泥岩露頭で、100 mほど下った崖では逗子層の上位の池子層と考えられるスコリア質の礫混じりの砂質泥岩層に変化しました。川沿いの露頭では池子層と考えられる凝灰質砂岩層を観察しました。
 大仏切通にある石切り場の跡では、池子層の逆断層を観察しました。切通をつくる地層は池子層でしたが、常盤住宅との分かれ道から逗子層の泥岩に変化しました。大仏坂ハイキングコースに入り、長谷隧道の上を過ぎるあたりまで逗子層でした。佐助稲荷への分岐手前で逗子層から池子層に変わり、佐助稲荷への急な下り階段の途中で池子層から逗子層へ変わりました。佐助稲荷神社から銭洗弁天へ向かう池子層の凝灰質砂岩の露頭で、生物の巣穴の化石(生痕化石)と逆断層を観察しました。隧道をくぐり道路沿いの池子層の露頭を観察しながら坂を上って行くと、葛原岡公園への階段手前で砂層の上総層群浦郷層に変化しました。池子層と浦郷層の境には黒滝不整合があるはずなので、どこで変わったのか戻って探して見ましたが、明確な不整合は確認できませんでした。
 源氏山公園入口から化粧坂切通に入ると、化粧坂へ下りはじめた所で凝灰質の砂が多くなり、さらに下ったところで、貝化石やスコリアを混じえた地層に変わりました。会員がツノガイの化石を採集しました。道がS字に曲がった地点で、砂層の上に礫層と浸食面を見つけました。これは黒滝不整合に相当すると考えられます。この黒滝不整合を基底として、巨礫を含む礫層と砂層の繰り返しが3 回見られ、礫層のある層準は基底から9 mに及んでいました。
 鎌倉駅西口に戻り、先生から化粧坂での黒滝不整合の存在は250 万年前に大きな地殻変動があった証しと考えられること、この地層が鎌倉の他の地域ではどうなっているのかを考える必要があること、逗子層は泥岩で火山灰がほとんど含まれていないのに対して、池子層には火山噴出物が多量に含まれていて、上位の地層ほど軽石が多くなるなどの特徴が見られ、同じ前弧盆にもかかわらず堆積環境の違いがあったと考えられること、などについてまとめがありました。(A. N. )
                    

極楽寺前で先生から観察目的などを聞く 極楽寺切通に露出する逗子層
▲極楽寺駅前に集合し、先生より今回の観察目的などの説明を聞く。 ▲極楽寺切通に露出する逗子層の露頭。
笛田6丁目に露出する池子層を観察する 大仏切通しの入り口
▲鎌倉市笛田6丁目に露出する池子層の露頭を観察する。 ▲鎌倉七口の一つである大仏切通の入り口。
大仏切通しの入口付近に露出する池子層 逗子層にみられる生痕化石(長谷4丁目)
▲大仏切通の入り口付近に露出する池子層の露頭を観察する。 ▲逗子層にみられる生痕化石(鎌倉市長谷4丁目)。
銭洗弁天の近くに露出する池子層を観察する 銭洗弁天のトンネルに露出する池子層
▲銭洗弁天の近くに露出する池子層の露頭を観察する。 ▲銭洗弁天敷地内のトンネルに露出する池子層。手前にゆるく傾斜する。
銭洗弁天東側の坂にみられる池子層 化粧坂切通しにみられる黒滝不整合の侵食面と基底礫層
▲銭洗弁天東側の坂にみられる池子層の露頭。 ▲化粧坂切通に露出する黒滝不整合と考えられる浸食面と基底礫層。


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