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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録
第234回 2012年7月21日 真鶴三ツ石
■ 真鶴三ツ石の溶岩と関東地震の隆起
■ コース:真鶴町ケープ真鶴バス停~三ツ石~ケープ真鶴バス停
今回の目的は、1) 大正関東地震の隆起を示すヤッコカンザシの化石を探すこと、2)
三ツ石周辺の溶岩から単成火山の証拠を探すことの二つでした。そのため、春の大潮の干潮時を選んで実施しました。
大潮の干潮であったので、ケープ真鶴のバス停先の岬への降り口からは、岬から三ツ石までが砂州でつながっていました。沖にある島と陸とがつながった地形はトンボロ(陸繋砂州)と呼ばれます。普段は海面下にあり、大潮の干潮の時に陸になります。岬からみるとトンボロは右手にカーブしており、南の湯河原側からの潮流によって形成されたことがわかると説明していただきました。トンボロは安山岩溶岩の大きな礫からできていました。
トンボロの一部には、安山岩溶岩の露頭があり、溶岩が流れた跡を示す縞状の流理構造や、溶岩流の下底や表面にできるガサガサした角礫状の溶岩(クリンカー)、溶岩を切る断層などを観察しました。先生から、斜交葉理と似た流理構造から溶岩の上下判定ができること、流理が急傾斜でさらに同心円状に流れた溶岩の流理から火口の位置を推測できることなどの説明を受けました。地形から三ツ石には複数の火口が存在したといえるようです。
もう1つの目的であるヤッコカンザシの化石については、溶岩のくぼみに多数見つけることができました。ヤッコカンザシは、ほぼ平均海水面に生息する事が知られているので、化石ヤッコカンザシが見つかれば、化石ヤッコカンザシが生息していた時期以降の、地震による隆起量を示すことになることを知りました。ここでの高さを計測した結果、海水面より150~180
cm と255~290 cmの位置にあることがわかりました。測定時間の潮位から平均海面からの高度に直すと、それぞれ、70~100 cm, 190~220
cmになります。これは大正関東地震と元禄地震にあたる可能性があるかもしれないと先生は指摘されました。先生のお話では、真鶴半島では定期的な水準点測量をしていないので、大正関東地震以降の地盤変動の記録は不明なようです。真鶴半島の関東地震による隆起量を明らかにするには、過去の平均海水面を示すヤッコカンザシの化石の高さが鍵になるということです。
帰路、真鶴町立遠藤貝類博物館を訪ね、山本真士学芸員に、三ツ石での現生のヤッコカンザシについてお聞きしました。ヤッコカンザシは、直射日光による温度上昇を嫌うので岩礁の凹部や岩陰、転石の下側に生息すること、エゾカサネカンザシは、三ツ石周辺には生息していないことなどを説明していただきました。三ツ石で現生のヤッコカンザシがあまり見つからなかった理由がよくわかりました。巡検開始当初は小雨でしたが、まもなく雨もあがり強い日差しもなく、とてもよい観察日和でした。(N.
S. )
▲岬先端より干潮前の三ツ石海岸を望む。 | ▲春の大潮の干潮時、トンボロで繋がった三ツ石海岸。 |
▲安山岩溶岩の巨礫がごろごろする上を歩いて三ツ石に向かう。 | ▲切り出した矢の痕が残る安山岩溶岩。 |
▲ヤッコカンザシの上位に棲息する天然記念物のウメボシイソギンチャク。 | ▲海水面よりヤッコカンザシ化石の高さを測る。 |
▲ここまで渉ってこないと三ツ石は見られない。 | ▲安山岩の角礫状溶岩を観察する。 |
▲顕著な流理構造をもつ安山岩溶岩。 | ▲クリンカー(角礫状溶岩)を挟む三ツ石の溶岩。 |
▲あばら骨のような形状をもつヤッコカンザシ(現生)。 | ▲三ツ石西側でヤッコカンザシ化石の高さを測定する。 |
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