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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第230回 2012年3月11日 横須賀市猿島



■ テーマ:猿島の上総層群
■ コース:横須賀市三笠桟橋~猿島桟橋~オイモノ鼻~日蓮洞窟~ヨネノ根

 猿島は横須賀沖の東京湾に浮かぶ、周囲約1.6 kmの無人島で、三笠桟橋から船で約10 分で渡ることができます。かつては軍事施設であり、一般人の立ち入りは禁止されていましたが、現在は猿島公園として観光地になっています。横須賀図幅 (江藤ほか 1998) によると、猿島は上総層群浦郷層からなりますが、北端部には三浦層群池子層が露出しているとされています。そこで、「三浦層群と上総層群の境界である黒滝不整合が観察できるのでは」との期待を持って今回の観察会が実施されました。
 船が桟橋に着くと露頭が目につき、ここから観察開始となりました。浦郷層の凝灰質細礫岩で、下部には大礫の礫層もみられました。走向はN55°W、傾斜は15°NEです。露頭前の砂浜は砂鉄の浜でした。管理棟前の路面で沖積段丘面の高さを測定したところ、約4.8 mでした。坂道をすこし登った所から広場に出て、三浦半島の小原台面を遠望した後、干潮時間を考慮に入れながら、島の北端部へと直行しました。北東部のオイモノ鼻の岩場に下りて上総層群浦郷層を観察しました。上部に2 m大の巨礫を含む礫岩があり、下位に向かって石灰質細粒砂岩、フジツボ片やミウラニシキ類などの貝化石片を含む凝灰質細礫岩、凝灰質粗粒砂岩と続いていました。
 次に最北端部の日蓮洞窟下のヨネノ根に下りました。礫岩層中のシルトからなる巨礫には、シルトの堆積時に地震によってできたと考えられる脈状構造が見られました。日蓮洞窟西側の崖に下りて、横須賀図幅(江藤ほか 1998)で黒滝不整合とされている露頭を観察しました。凝灰質砂岩の下位に巨礫岩、その下位に凝灰質砂岩が観察でき、すべて同様の構造をなすことから露頭全体がすべて浦郷層と考えられ、不整合に相当する地層の不連続を認めることはできませんでした。帰路は、要塞や砲台跡を見学し、トンネルや切り通しでラミナなどを観察しながら管理棟へ戻りました。(N. S. )

文献:
江藤哲人・矢崎清貫・卜部厚志・磯部一洋(1998) 横須賀地域の地質.地域地質研究報告(5 万分の1 地質図幅),地質調査所,128 pp.
                    

三笠桟橋から猿島を望む 桟橋近くに露出する浦郷層の露頭を観察する
▲三笠桟橋から猿島を望む。 ▲桟橋近くに露出する浦郷層の露頭を観察する。
凝灰質な礫岩からなる浦郷層 軍事施設としての面影を残す
▲凝灰質な礫岩からなる浦郷層。 ▲猿島内部の様子。軍事施設としての面影を残す。
オイモノ鼻の浦郷層は砂岩や礫岩からなる 浦郷層の礫岩中に含まれるシルト礫
▲オイモノ鼻の岩場に露出する浦郷層の露頭。砂岩や礫岩からなる。 ▲浦郷層の礫岩中に含まれるシルト礫。
浦郷層中に含まれるフジツボ化石 オイモノ鼻に露出する浦郷層を観察する
▲浦郷層中に含まれるフジツボ化石。 ▲オイモノ鼻に露出する浦郷層を観察する。
ヨネノ根の、砂岩や礫岩からなる浦郷層を観察する 礫岩中に含まれるシルト礫にみられる脈状構造
▲ヨネノ根に露出する、砂岩や礫岩からなる浦郷層を観察する。 ▲礫岩中に含まれるシルト礫にみられる脈状構造。
猿島北部に露出する浦郷層は砂岩が優勢 上下とも浦郷層、黒滝不整合はさらに下位と考えられる
▲猿島北部に露出する浦郷層の露頭。砂岩が優勢であった。 ▲上下とも同様の浦郷層であり、黒滝不整合はさらに下位と考えられる。


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