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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録
第216回 2010年11月7日
新江ノ島水族館・江ノ島
■ テーマ:新江ノ島水族館と江ノ島の地層
■ コース:新江ノ島水族館~江ノ島聖天島~山二つ~稚児ヶ淵~湘南港
今回の目的は午前中、藤沢市片瀬海岸の新江ノ島水族館で相模湾ゾーンの展示見学を、午後は江ノ島に渡り地層の観察をすることでした。
9時の開館に合わせ水族館に入館し、まず相模湾ゾーンの展示を見学しました。相模湾の水中を再現した「相模湾水槽」では90 種2 万尾の魚が泳いでいて、マイワシの群れが形をかえながら泳ぐ光景も目にしました。
「相模湾断面ガイド」という展示パネルには、相模湾は日本で 2 番目に深い湾であること、相模湾では地球科学的活動のほとんどが確認できること、相模湾中部には相模トラフというプレートの境界があること、相模湾西部には活火山の列があり海底火山が存在すること、相模湾東部には小高い山と谷の連なりがあること、という
5つの特徴が記されていました。こうした特徴と、親潮と黒潮の影響を受けていることから、相模湾が豊富な生物の生息する多様性に富んだ海域であることがよく理解できました。
また、深海生態系の展示解説とバックヤードツアーを飼育員の根本さんにしていただきました。化学合成生態系水槽の前では、会員から活発に質問が出されました。サツマハオリムシに硫化水素を供給すると、赤い鰓が次々に動きだして硫化水素を体内に運ぶ様子も観察できました。バックヤードでは、ドッグフードを水槽の泥の中に埋め硫化水素を発生させる装置を見て「なるほど・さすが!」と感心しました。
水族館を後にして江ノ島に渡り、東京オリンピックの際に埋め立てられ陸続きとなった聖天島公園で昼食をとりました。葉山層群でも逗子層でもない池子層に似ている聖天島の露頭を観察し、南東から北西方向の古流向を示す斜交葉理がみられました。
江ノ島中腹の中津宮近くの展望台から対岸の腰越を望み、聖天島だけが葉山層群ではないことのヒントが対岸にあるかも知れないと森先生より聞きました。その後、江ノ島中央部の断層により東西二つにくびれた「山二つ」に行きました。その北側崖で、ローム層中に箱根火山起原の3枚の軽石層を観察しました。上位より、それぞれ、箱根三色旗テフラ、箱根東京テフラ(約6.5万年前)、箱根三浦テフラということです。
江ノ島西海岸の稚児ヶ淵南側では、聖天島でみた地層とは全く異なる葉山層群の地層を観察しました。縞模様のない非常に硬い塊状の砂岩からなっていました。また、角礫状の砂岩礫が岩脈状に葉山層群中に入り込んでいる露頭を先生に案内いただき、正断層の断層運動により角礫化されたものであろうとのお話でした。稚児ヶ淵西側では、葉山層群中に黒い粘土鉱物が筋状に入っている様子を観察しました。これは葉山層群が本州弧に付加する過程における逆断層運動によって形成されたものとのことでした。
帰路は稚児ヶ淵の船着き場から船で戻ることにしました。最終船は、江ノ島の南西側から東へ廻り湘南港へ戻りました。通常は弁天橋に戻る西側コースなので、めったにないお得体験に会員はシャッターを切り続けました。山二つを見上げ、海食洞や海食崖も間近に眺めて、江ノ島の地形や成り立ちを海上からも観察できました。江ノ島は周囲4
km, 標高60 mほどですが、もっと大きく感じることができました。観光スポットの江ノ島も、「地球の営み・恵みがあってこそだ!」と通常の野外観察では経験できない秋の一日を過ごすことができました。(K.
K. )
▲相模湾の展示パネルを見る(新江ノ島水族館) | ▲相模湾の特徴を解説した展示(新江ノ島水族館) |
▲飼育員の方の説明を聞く(新江ノ島水族館) | ▲硫化水素ガスだけで生きているサツマハオリムシ(新江ノ島水族館・JAMSTEC) |
▲新江ノ島水族館より江ノ島を望む | ▲池子層に似る聖天島の地層の説明を聞く(聖天島) |
▲水流の流れを示す斜交葉理(聖天島) | ▲中津宮から腰越方面を遠望する |
▲箱根東京テフラの厚さを測る(山二つ) | ▲南北性の断層により形成された山二つのくびれ部 |
▲葉山層群の波食台露頭と乗船場を望む(稚児ヶ淵) | ▲山二つを海上より遠望する(南西海岸) |
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