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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第213回 2010年7月10日 三浦市城ヶ島



■ テーマ:城ヶ島の三崎層 
■ コース:三浦市城ヶ島楫の三郎山~西崎の磯~長津呂湾~馬の背洞門

 
 今回は梅雨の合間の好天に恵まれ、三浦半島南端にある城ヶ島の三浦層群を観察しました。先生から「島の西側は三浦層群でも古い三崎層が褶曲しており、向斜軸が西北西-東北東に走っています。また全体に北東に傾いているため東側の方が新しい地層になります」と説明がありました。
 まず、島の西岸にあるホテルの近くに露出する三崎層の露頭で走向・傾斜を計測し、その場所が向斜軸の北側であることを確認しました。そこから20 mほど西のの露頭では、ヤッコカンザシというゴカイの仲間が作る棲管を観察しました。ヤッコカンザシは炭酸カルシウムからなる棲管を汀線付近に作り、その場所に固着して生きるという生態を持ちます。また化石として残された棲管はかつての汀線の位置を示す証拠となります。今回観察した地点では、現在の平均海面付近(大潮干潮時で海面の約60 cm上)に現生ヤッコカンザシが見られたほか、海面上145 cmと225 cmの高さにヤッコカンザシの棲管化石が2列の白い帯として密集しているのが確認できました。この2列のヤッコカンザシ化石は、1923年の大正関東地震と1703年の元禄関東地震により離水した汀線であると考えられています(宍倉ほか, 2003)。
 次に観察した城ケ島南西岸の長津呂湾周辺では、スコリアとシルトの互層からなる三崎層の露頭を観察しました。この地点は向斜軸付近~軸南翼南側にあたり、軸を中心に馬蹄形の外側へ下位の地層が広がっている様子が見られました。逆断層、デュープレックス構造、級化構造に加え、見事な火炎構造、スランプ構造、生痕化石、ウェブ構造等の数々の堆積構造が観察できました。この辺りは約800万年前の地層とのことで、箱根や富士も伊豆半島もまだない頃、粗粒なスコリアや細粒な火山灰が何処から来たのか興味が尽きません。なお、南岸沿いの標高約30 m(ローム層の厚さを除くと標高17~18 m)の段丘面は約7万年前の波食台であると先生から解説がありました。
 さらにそこから南東に300 mほどの地点では、三崎層の上位の地層である初声層を観察しました。岩相はシルトからなる三崎層とは異なり、軽石とスコリアを含む凝灰岩質砂岩でした。馬の背洞門は、海食洞が波食により貫通されてアーチ状になっていました。ここには、崖面にはきれいなクロスラミナが見られました。この崖の中腹にある関東ローム層中には、約6.5万年前の箱根の大噴火による降下軽石と、その直上に火砕流堆積物がみられ、「相模湾上をホーバークラフトのように渡ってきた火砕流です」との解説がありました。最後に、白秋碑バス停にて先生から総括があり、帰路につきました。(T.Y.)

文献
宍倉正展 (2003) 変動地形からみた相模トラフにおけるプレート間地震サイクル. 東京大学地震研究所彙報, 78, 245-254.
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三浦層群三崎層にみられる海底地すべりによって形成された褶曲(城ヶ島西岸) 膝の位置に現生の、指している位置に大正関東地震のヤッコカンザシの棲管がある(城ヶ島西岸)
▲三浦層群三崎層にみられる海底地すべりによって形成された褶曲(城ヶ島西岸)。 ▲膝の位置に現生の、指している位置に大正関東地震のヤッコカンザシの棲管がある(城ヶ島西岸)。
現生のヤッコカンザシの生管(城ヶ島西岸) 三崎層のスコリア質凝灰岩(城ケ島西岸)
▲現生のヤッコカンザシの生管(城ヶ島西岸)。 ▲三崎層のスコリア質凝灰岩(城ヶ島西岸)。
急傾斜したスコリア凝灰岩を観察する(城ケ島西岸) 馬蹄形に変形した褶曲軸付近の三崎層(城ヶ島南西岸)
▲急傾斜したスコリア凝灰岩を観察する(城ヶ島西岸)。 ▲馬蹄形に変形した褶曲軸付近の三崎層(城ヶ島南西岸)。
三崎層に残る生物の巣穴と思われる生痕化石(城ヶ島南西岸) 黒(スコリア層)と白(シルト層)の互層からなる三崎層を観察(城ヶ島南西岸)
▲三崎層に残る生物の巣穴と思われる生痕化石(城ヶ島南西岸)。 ▲黒(スコリア層)と白(シルト層)の互層からなる三崎層を観察(城ヶ島南西岸)。
三崎層にみられる逆断層(城ヶ島南西岸) 三崎層にみられる海底地すべり構造(城ヶ島南西岸)
▲三崎層にみられる逆断層(城ヶ島南西岸)。 ▲三崎層にみられる海底地すべり構造(城ヶ島南西岸)。
三崎層中の火山灰層が示す火炎状構造(城ヶ島南西岸) 三崎層の鍵層である厚い白色凝灰岩層(SO)(城ヶ島南西岸)
▲三崎層中の火山灰層が示す火炎状構造(城ヶ島南西岸)。 ▲三崎層の鍵層である厚い白色凝灰岩層(SO)(城ヶ島南西岸)。
海食洞が波食によりアーチ状となった馬の背洞門(城ヶ島南岸) 初声層の凝灰質砂岩中にみられるクロスラミナ(城ヶ島南岸)
▲海食洞が波食によりアーチ状となった馬の背洞門(城ヶ島南岸)。 ▲初声層の凝灰質砂岩中にみられるクロスラミナ(城ヶ島南岸)。


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