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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録
第198回 2008年12月21日 西桂町神鈴の滝・達磨石
■ テーマ:丹沢の衝突境界・桂川礫岩
■ コース:西桂町三ツ峠駅~神鈴の滝~達磨石
今回は、2007 年10 月のコースをさらに上流まで歩き、桂川断層、達磨石、枕状溶岩露頭を観察しました。今までに、「衝突境界を歩く」をテーマに丹沢山地北部や東部などで、石老山礫岩・岩殿山礫岩・三ツ峠礫岩・落合礫岩・足和田山礫岩・巡礼峠礫岩などを観察してきました。衝突境界に堆積するトラフ充填堆積物の特徴は、上方細粒化のタービダイトを繰り返しながら、全体には上方粗粒化し、礫が円磨度の高い海成礫であることが挙げられます。また、プレートの沈みこみにより北側の関東山地が隆起しているため、関東山地からもたらされた礫が圧倒的に多いのも特徴です。それは、藤野木-愛川構造線と接する石老山礫岩や岩殿山礫岩が、関東山地の頁岩や砂岩礫でほとんど占められていることからも良くわかります。
三ツ峠付近の古屋砂岩層や桂川礫岩層は、どのような礫種で構成されているのか、また、上方粗粒化が確認できるのか、大変興味を持って参加しました。乗り換えの大月駅でトラフ充填堆積物からなる岩殿山を仰ぎ、三ツ峠駅から三ツ峠登山道に向かう道では、同じくトラフ充填堆積物からなる三ツ峠山が正面に望めました。三ツ峠山はかなり急峻な地形をしていますが、その南側は前山としてややなだらかな低山になっていました。この2 つの地形の間に、桂川断層があり、丹沢山地を構成する凝灰岩類と、丹沢が衝突する前のトラフを埋めた堆積物が繰り返して分布しているという説明を森先生から受けました。
登山道から1 kmほど登ると、柄杓流川沿いに「神鈴の滝遊歩道」がありました。神鈴の滝は別名「魚止めの滝」とも言われ、連続して400
mもの岩盤が続くみごとな「滑滝(なめりたき)」でした。河床に降りて実際に露頭を観察すると、河床の古屋砂岩層はENE-WSWの走向を持ち、北へ40度ほど傾斜しており、下位は粗粒砂岩から始まり、上位は、礫→砂→泥と級化構造を見せるタービダイト・シークエンスを繰り返す砂岩層でした。礫は円磨度の高い中礫で、関東山地の礫が圧倒的に多く、丹沢山地起源の凝灰岩はごくわずかでした。
古屋砂岩層から桂川礫岩層への移り変わりは急激で、断層かと思われるような変わり方でした。桂川礫岩層は大礫に富む部分と細礫に富む部分とが互層状を呈していました。桂川礫岩層には、丹沢火山体を構成する緑色凝灰岩礫が四万十帯の砂岩・頁岩礫よりを多く含まれていました。礫には円磨度が高いボール状の花崗岩礫もありました。森先生から、これは甲府深成岩体の礫との説明を受けました。このほかにも、わずかに秩父帯起源のチャート礫もありました。古屋砂岩層とは礫種も礫径も変わり、頁岩・砂岩の占める割合は低くなり、礫径も大きくなっていました。
その後、登山道を進むと、緩傾斜からやや急傾斜に変わるところがあり、桂川断層があると想像できました。この桂川断層は今までみてきた桂川礫岩層とこれからさらに上流側にある白滝火山礫凝灰岩層を境する断層とのことでした。上流側により古い時代の地層があることから、この断層は逆断層であることになります。急傾斜の斜面を登っていくと達磨石が迎えてくれました。達磨石の少し先には枕状溶岩の露頭がありました。枕状溶岩は無斑晶質玄武岩からなり横方向にハイアロクラスタイトに漸移していました。この枕状溶岩は丹沢山地に認められるものと同時期のもので、南の海で生まれた海底火山の一部であったことを知り、海底火山から流れでた溶岩が枕状溶岩となって下りながら、破砕されてハイアロクラスタイトになって進む様子が見えるようでした。(M.
I. & S. M. )
▲乗り換えの大月駅で礫岩からなる岩殿山を間近に仰ぐ(大月駅) | ▲三ツ峠山と手前の低山の間に桂川断層が走る(下暮地) |
▲古屋砂岩層はENE-WSWの走向を持ち、北へ40度ほど傾斜する(神鈴の滝) | ▲神鈴の滝の河床に降り、古屋砂岩層の特徴を観察する |
▲古屋砂岩層の細礫層はほとんど四万十帯の砂岩・頁岩からなる(神鈴の滝) | ▲古屋砂岩層から桂川礫岩へは急激に移り変わる(神鈴の滝) |
▲桂川礫岩層は丹沢火山体起源の緑色凝灰岩が多く円磨度も高い(神鈴の滝) | ▲白滝火山礫凝灰岩層の分布域に入ると達磨石が迎えてくれた(三ツ峠登山道) |
▲無斑晶質玄武岩からなる枕状溶岩の露頭(三ツ峠登山道) | ▲枕状溶岩からハイアロクラスタイトに移行する様子を観察する(三ツ峠登山道) |
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