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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録
第180回 2007年2月4日
横浜市氷取沢市民の森〜瀬上市民の森
■ 横浜の上総層群
今月は「横浜の上総層群」をテーマに、横浜市南部の氷取沢市民の森〜瀬上市民の森を歩き、上総層群中の広域テフラや化学合成化石群集などを観察しました。今回は、本会会員である千葉大学理学部の藤岡導明氏にご案内いただきました。
洋光台からバスで、氷取沢まで行き、氷取沢市民の森へ入りました。このあたりは、横浜でも自然がそのまま残されており、地層がよく観察できます。上総層群は横浜から房総の丘陵地を作る地層で、現在の関東平野の前身を作る地層です。この上総層群中には軽石層やスコリア層の他に白色の細粒凝灰岩(火山灰、降下した火山噴出物を総称してテフラという)が数多く挟まれており、特に細粒のテフラは穂高など北アルプスの火山起源であることが、最近明らかにされました。今回は、このルートに出ている大船層と小柴層中のSg1〜4という4枚の北アルプス起源の広域テフラをよく観察しました。Sg3は岐阜県高山地域起源で、恵比寿峠−福田テフラといい房総のKd38に、Sg4は穂高−Kd39テフラと呼ばれるとの解説を受けました。このテフラは重鉱物を少量しか含まず、大部分が火山ガラスからなり、それぞれ岩相に特徴がありました。年代は180〜150万年前のものだそうです。地層の広域的な対比に有益で、これらのテフラを用いて房総半島まで対比されています。氷取沢市民の森と瀬上市民の森では、ほぼ同様の地層からなっていました。瀬上市民の森の小沢では、浅海に生息するロッセリア・ソシアリスという生痕化石も解説いただきました。生痕の産状から地層の堆積速度と生痕化石の関係などを考えました。上郷高校南では、オウナガイやツキガイモドキからなる化学合成化石群集を観察しました。メタンガスが噴出したものと考えられる炭酸塩岩もみられ、沈み込み帯の内側である前孤域で化学合成化石群集がどうして形成されるのか、大変興味を持ちました。
(S.M.)
文献
・藤岡導明他(2003) テフラ鍵層に基づく横浜地域の大船層・小柴層と房総半島の黄和田層との対比.
地質学雑誌, 109, 166-178.
・間嶋隆一他 (1996) 横浜市の上総層群から発見された現地性化学合成化石群集.
化石. 61, 47-54.
▲大船層中に挟まれる、北アルプスの火山に由来する広域火山灰を観察する。 |
▲岐阜県高山地域から飛来した恵比寿峠−福田テフラ。 |
▲小さな沢沿いの崖に露出する広域火山灰の地層をスケッチする。 | ▲穂高から飛来した穂高−Kd39テフラ。 |
▲テフラの厚さを測る会員。 | ▲浅海に生息するロッセリア・ソシアリスという生痕化石。 |
▲資料を基に解説する講師の話を熱心に聞く会員。 | ▲化学合成化石群集であるツキガイモドキ。2枚の殻が地層に直立しているので、生きていた状態で埋積された。 |
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