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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録
第177回 2006年11月4日
湯河原町城山
■ 湯河原火山と箱根溶岩
探る会では初めて「湯河原火山」がテーマで、湯河原町城山に登りました。
「Kuno,H.(1950)の地質図によれば、湯河原火山の溶岩は湯河原町に分布し、城山登山道途中で、箱根古期外輪山溶岩に不整合関係に覆われるとされます。今日は露頭を探し、箱根との違いを見るのが目的です」と説明を受け出発しました。
歩き始めてまもなく、雑色の火山礫凝灰岩で七沢石に似た石塀がありました。釜石という石材で、鍛冶屋から産出したものということを後で知りました。先にいくと、鍛冶屋の白丁場という白色の輝石デイサイトの溶岩を切り出した間知石もあり、神社の石碑・人家の基礎・石垣・石塀に湯河原の石材や小松石・根府川石などが使われていました。城山ハイキングコースはほとんど舗装道路で、午前中は露頭が少なく、石垣の観察をしながら、少し早い紅葉を楽しみながら、色づいたミカン畑の中を心地よく歩きました。
人家がなくなった先から漸く溶岩や火砕岩の露頭が見られました。湯河原火山の溶岩はやや風化の進んだ斑晶に富んだカンラン石を含む輝石安山岩でした。湯河原火山の噴出物は火砕岩が極めて多いように見えました。これに比べて、箱根の古期外輪山溶岩は灰色の輝石安山岩で極めて新鮮でした。ちょうど、Kuno(1950)の地質図通りの位置で、湯河原火山と箱根古期外輪山溶岩とが不整合関係で接していました。湯河原火山の噴出物は赤色に高温酸化した火砕岩で、取り込まれた礫は草削りで切れるような“くされ礫”でした。どうしてこのような“くされ礫”ができたのでしょう?。
露頭観察により、予定が大幅に遅れたため、城山山頂で集合写真を撮り、小休憩後すぐに出発しました。山頂からしとどの窟へ向かう道は石畳の道で、根府川石で、露頭の溶岩と間違えそうになりました。この間で観察した溶岩は箱根古期外輪山を作る輝石安山岩でした。しとどの窟入口バス停に着いた時、真っ赤な夕日が沈むところで見とれてしまいました。
(N.S.)
▲鍛冶屋から産出する白丁場という輝石デイサイトの石材を用いた間知石の石垣を観察。 | ▲箱根の溶岩を使った石垣に見られる”不整合”。植林との関係を考える。 |
▲湯河原火山の噴出物は大部分が、赤色化した凝灰角礫岩だった。 | ▲湯河原火山の火砕岩中に挟まれる板状の溶岩流を観察する。 |
▲箱根の古期外輪山溶岩を観察する。 | ▲箱根の溶岩は新鮮で塊状の灰色の輝石安山岩。 |
▲城山山頂で休憩。真鶴半島がかすんで見えた。 | ▲しとどの窟への途中では板状の外輪山溶岩が観察された。 |
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