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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録
第144回 2003年12月21日 玄倉
■グリーンタフを貫くトーナル岩
山北町玄倉林道〜仲の沢林道〜坂口鉱山跡〜小川谷で西丹沢のグリーンタフ・トーナル岩・鉱山跡を観察しました。
集合地の玄倉バス停前で、丹沢深成岩体の分布や組成、変成岩について、地下深所でできた岩石が地表に露出している意味等、基礎的な話しをしてから出発しました。まず、近くの山北町丹沢森林館で丹沢山地の岩石・鉱物・化石を見学してから、観察コースに入りました。
林道沿いには、丹沢層群最下部層の岩相(顔つき)と熱変成(火傷)の様子をつかむことができました。熱変成の範囲は、玄倉第一発電所先からうかがえて、緑簾石やプレーナイト(葡萄石)の鉱物脈、ラピリタフ(火山礫凝灰岩)が片状になっている等の変化が見られました。さらに林道を進むと、火傷した岩石のホルンフェルスが出始め、進むに従って叩いた時の高めの音や鋭い割れ方にその特徴が表れます。地層は小川谷出合いまで北傾斜で逆転していました.源岩は主に玄武岩質〜安山岩質で、様々な粒子の凝灰岩でした。これらの岩石中には、ガス抜け孔に針状・淡暗緑色ガラス光沢の緑簾石が、脈では薄板状・透明〜白色ガラス光沢の束沸石の結晶が見られ、沸石相の変成を受けていることが実感できました。
坂口鉱山は、日本地方鉱床誌「関東地方」(昭和48年朝倉書店)の銅・鉛・亜鉛鉱床の項に、「丹沢層群の緑色千枚岩中に胚胎し、黄銅鉱・黄鉄鉱・石英よりなる.他の同種の丹沢山地の鉱山と同様に小規模なため採鉱が行われたにすぎない」と記載されています。しかし、坂口鉱山跡では石積みの広場があったものの、脈状の黄鉄鉱が入る鉱石らしきものがあっただけで坑口も確認できませんでした。
その後、深成岩体の接触部へと向かいました.接触部ではトロニ工ム岩の岩脈や、本体から枝別れしたユーシン型トーナル岩が不規則にホルンフェルスに入り込んでいたり、10m以上の幅のトーナル岩の部分があったりで、隙間や割れ目にマグマが入り込んだ様子をうかがうことができました。
3km程の道程をバス停へと急ぎながら今日を振り返り、丹沢山地の隆起はフィリピン海プレートが押す限り続くのだろうか?、美しい沸石脈を造った熱水もトーナル岩に由来するものか?、火山礫が引き延ばされるにはどの位の圧力と温度が必要なのか?、現在も火山体の地下深所でマグマが動いているのだろうか、等と新たな疑問を感じました。ともあれ地殻変動の多い日本の中でも、日高山地と肩を並べるトップレベルの“いろいろあり”の丹沢山地の一端を観察することが出来て、とても有意義な一日でした。(E.W)
▲玄倉バス停に集合。富士を見ながらコースを説明。 | ▲丹沢森林館で丹沢のサンゴ化石や岩石を観察する |
▲弱い変成を受けて凝灰岩中の火山礫がつぶれている。 | ▲このあたりの凝灰岩の地層は垂直に近く立っている。 |
▲坂口鉱山跡で鉱石を探す会員 | ▲坂口鉱山を目指して川を渡る。 |
▲トーナル岩体の割れ目から湧水が湧く。 | ▲白いトーナル岩と凝灰岩の接触部を観察。トーナル岩マグマが地下で貫入した境界部。 |
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