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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第143回 2003年11月16日 東伊豆


東伊豆単成火山群と丹那断層
○コース:伊東市橋立〜城ヶ崎〜大室山〜岩ノ山〜巣雲山〜丹那

 今回は、東伊豆の単成火山群の観察に行きました。東伊豆単成火山群の活動は、プレートの圧縮方向、箱根火山の活動、昭和5年の北伊豆地震、国府津松断層の活動にも関係していると考えられています。東伊豆単成火山群の噴火は、14万年前の遠笠山に始まり、13万年前に高塚山−巣雲山が、10万年前にマール(爆裂火口)である一碧湖を中心とした北西−南東方向にならぶ火山列が作られ、5000年前に大室山が噴火して5.1億トンもの大量の溶岩が流出し、城ヶ崎海岸を形成し、続いて大室山のスコリア丘が作られたといわれています。2700年前になると、天城山の北東斜面で噴火が始まり、岩ノ山−伊雄山火山列が作られたと言われます。
 最初に、橋立の岬から大室山溶岩が海中で急冷されて出来た見事な柱状節理を観察しました。ここの柱状節理は径1.5mほどの五角形〜六角形の黒っぽい玄武岩質安山岩でした。波食台に降りてみると、30m以上の厚さの溶岩が海岸線に断崖を作っており、表層部から赤色化したクリンカー、板状節理、柱状節理と一枚の溶岩が上から下へ移り変わっていました。溶岩をよく見ると黄緑色のカンラン石がたくさん入っています。柱状節理やその周辺で溶岩をよくみるとガス抜けした気泡が溶岩流の方向(流理)をよく示していました。
 城ヶ崎の門脇崎では、灯台から吊橋まで大勢の観光客であふれるほどでした。吊り橋の上では、溶岩トンネルの天井が崩落してできたといわれる大きく深い溝状の「半四郎落し」を観察しました。溶岩トンネルとは熱い溶岩が冷えて固まるときに内部の固まっていない溶岩やガスが抜け、表面の固まった部分のみを残して出来たものです。溶岩トンネルの生成時、残った部分(抜けた部分と残った部分の接触面)は熱いうちに空気に接触して酸化され、赤く変色しているのが、右(北)側の崖部分に見られました。灯台や門脇崎付近では垂直に立った溶岩皺が一様にN30W方向を向いていました。溶岩皺の方向から考えると、大室山から噴出した溶岩流は、この地に西から東へ真直ぐ流れてきたのではなく、回り込んで南西から北東へ向かって流れていることになります。岬からさらに進み海岸に下った場所に溶岩トンネルがあることを会員が発見しました。
 次に、大室山の西側にある蝋人形館の裏手で大室山テフラの観察を行いました。ここでは0.5〜3cmの厚さで粗いスコリアと細かい火山灰が繰り返し、級化構造がくっきり見えました。単成火山の大室山でも何回もの噴火が繰り返されたことがわかります。この日は風が大変強く残念ながら大室山山頂行きリフトに乗車できませんでした。予定を変更し、さくらの里で、昼食を摂った後、矢筈山、孔ノ山の溶岩円頂丘(溶岩ドーム)を左手に見ながら岩ノ山に向かいました。
 岩ノ山西側の露頭では、黒曜石とパン皮状火山弾が多数見られました。地表部にはパン皮状火山弾が散在し、地層上部は白っぽいデイサイトの角礫層、下は黒いスコリア層でした。安山岩質マグマによる水蒸気マグマ噴火として始まった岩ノ山噴火がデイサイト質噴火に変化したことを示すものと、静岡大学の小山氏は説明されています。
 次の、巣雲山横の崖では、13.2万年前の巣雲山噴火の堆積といわれる噴出物を観察しました。カラシ色に変色したスコリアで、大室山と比べると粒径の大きい厚いスコリア層でした。
 夕方、昭和5年の北伊豆地震を起こした丹那断層に到着しました。ここでは、南北性に走る左横ズレ断層が観察でき、石垣やゴミ捨て場、水路が2m程、ずれていました。北側の地下観察室では、この丹那断層の断面が観察できましたが、北東方向へ断層が曲がっていました。丹那断層は1本の断層ではなく、雁行する断層の複合帯であるとの説明がありました。その後、急いで火雷神社の断層による鳥居のズレの現場を見学し、充実した一日を終えました。(K.I.)

橋立の柱状節理 大室山溶岩流の海食崖
▲亀甲状の六角柱状節理の断面が波食台によく露出する(伊東市橋立) ▲5000年前に大室山から流れた大室山溶岩流の断面がよく見える(伊東市橋立)
城ヶ崎で説明 城ヶ崎の大室山溶岩の崖
▲城ヶ崎で大室山噴火について説明する ▲城ヶ崎海岸には大室山溶岩流の柱状節理がよく発達する
溶岩トンネルの跡 直立したクリンカー上部
▲天井の落下した溶岩トンネル(城ヶ崎海岸) ▲溶岩の表面のがさがさ部(クリンカー)には表層部が動いて垂直に立っているのが見える。
大室山から噴出した噴出物 5000年前に出来た大室山
▲溶岩流の後に大室山から噴出した噴出物。成層した、粒の細かいスコリア層からなる。 ▲5000年前に噴火した噴出物が堆積してできた大室山(桜の里)

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