昔のお勝手仕事は座って行う作業が多く、流しは座り流しでしたし、まな板が足付きだったのも、板の間に直接置いて使用するのに都合が良かったからです。昭和初期にはすでに立ち流しが一般的になり、足付のまな板もあまり使われなくなりました。
包丁は、菜切り包丁、出刃包丁、刺身包丁など数種類を揃え、砥石で研いで使い込みました。切ったり、削ったりする道具には野菜の皮むき、切り干し切り、ナマス削り、鰹節削りなどがあります。切り干し切りは大根を千切りや薄切りにする道具で、切った大根をさっと蒸してから寒中に干し上げ、切り干し大根にして保存します。鰹節削りは、古くは包丁で削ったり、鉋を代用していました。 擂り鉢と擂り粉木は、味噌を摺ったり、胡麻和えを作ったり、草の花団子のヨモギを摺るなどの摺りものに用います。自家製の味噌は大豆の粒などが残ったので、細かく摺ってから鍋に入れました。擂り粉木には香りの良い山椒の木が使われました。木鉢は、こね鉢ともいい、米の粉をこねて団子にしたり、小麦粉や蕎麦粉をこねてウドン、ソバを作ります。また、丈夫で安定した容器なので、蒸し上がった赤飯などをあけるのに用いたりもしました。 木鉢で粉をこねたら伸し板に移し、伸し棒を転がして平たく伸します。伸し板は上から大きな力が加わるので、厚い板でできており、木が反らないように二本の足が付いています。餅の伸し板は、切り餅を作るときの板で、周囲に枠があり、枠の上に伸し棒を転がして均等に伸していきます。 笊は、シキ(底)幅とマワシ(胴)の高さがほぼ同じサイズの深形の笊が多目的に用いられました。容量は鉄砲ザルという一升笊から二升、三升、五升、一斗、アゲザルという二斗笊まであり、研いだ米の水切りをはじめ、あらゆる食材の水切りに用います。この他、味噌こし笊、茹でたソバを鍋からすくいあげるソバスクイ(テスクイ)、ざる蕎麦を盛るソバアゲザルなどがあり、籠には洗った茶碗の水切りに用いる茶碗上げ籠、夏に御飯を入れたご飯籠などがあります。竹製品は、プラスチックや金属製品に押され気味ではありますが、見た目の美しさや、編み目の面白さなど、竹の持つ味わいを好む人も少なくないことでしょう。 | |
座って(すわって) 包丁(ほうちょう) 砥石(といし) 研いて(といて) 鰹節(かつおぶし) 鉋(かんな) 蒸して(むして) 擂り鉢(すりばち) 擂り粉木(すりこぎ) 胡麻和え(ごまあえ) 鍋(なべ) 山椒(さんしょう) 木鉢(きばち) 蕎麦粉(そばこ) 笊(ざる) 茹でた(ゆでた) 籠(かご) 茶碗(ちゃわん) | |
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