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探る会第224回 2011年9月 「玄倉の枕状溶岩と流紋岩」

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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第224回 2011年9月10日 山北町玄倉



■ テーマ:玄倉の枕状溶岩と流紋岩
■ コース:神奈川県立丹沢湖ビジターセンター~小菅沢~玄倉川~山北町立丹沢森林館


 今回は、神奈川県立生命の星・地球博物館 外来研究員の門田真人先生が、最近新たに発見された、西丹沢の小菅沢と玄倉川の枕状溶岩、玄倉川支流の大野山沢のザクロ石流紋岩をご案内くださいました。枕状溶岩は、海底火山から流れ出た溶岩が水中で急速に冷やされて枕状を呈するもので、かつて丹沢が海底火山だった証拠になります。
 まず、神奈川県立丹沢湖ビジターセンターで、丹沢の成り立ち、枕状溶岩・流紋岩・サンゴ化石の分布と年代、断層がもたらす温泉、湧水などの基礎知識を画像を使って説明していただきました。
 野外に出て、小菅沢沿いの林道を約1 kmさかのぼり、小菅沢橋の袂より河原へ降りました。150 mほど進んだ堰堤の下に、門田先生が新たに発見された、枕状溶岩の大転石がありました。磨かれて、玄武岩の枕がきれいに積み重なった様子が良く観察できました。すぐ上流の右岸寄りにも2個の大転石があり、倒木をどけて水をかけ、各自持参したブラシで転石の一つを磨き上げました。さらに堰堤の上の左岸を100 m程さかのぼった崖に枕状溶岩の露頭があり、約1600万年前の大きな潰れた枕が観察できました。
 昼食後、先生が下見で見つけられた枕状溶岩の転石に、楔を打ち込んで割ってくださり、サンプルとして持ち帰りました。急冷相がきれいに見える見事なものでした。
 その後、玄倉川沿いに進み、玄倉川水位観測所の崖下にある枕状溶岩の磨かれた露頭を案内いただきました。河原に下り、対岸にも枕状溶岩の露頭が続いていることを確認しました。約1700万年前に形成されたものとのことでした。
 対岸の大野山沢の押し出しに向かって玄倉川を渡り、合流点の押し出しでザクロ石流紋岩の転石を探しました。たくさん見つかりましたが、含まれているザクロ石は粒径が1 mm以下で少量でした。この流紋岩は、中川の細川谷で確認されている流紋岩岩脈の延長にあたり、丹沢層群を貫いた約250万年前の火成活動によって形成されたものです。この時の降下テフラが中津・鎌倉・銚子でも確認されています。
 次に、現在休館中のところを特別に開けていただいて、山北町立丹沢森林館を見学しました。丹沢の岩石標本の展示はすばらしく、門田先生の収集されたサンゴ化石の展示も見事でした。館内のまとめで、先生より、「巡検は自然保護とお土産をモットーにしていますが、今日は枕状溶岩をお届けできました。台風が来ると災害が生じますが、新たな露頭・転石の発見もあります」 との話がありました。
 森先生からは、「今まで、枕状溶岩の観察は遠くて大変というのが常でした。今日、こんなに近くで観察できたのは門田先生のお陰です。収集した枕状溶岩は、常設展示します。これからも先生の新しい発見に期待します」 との挨拶がありました ( この標本は後日磨き、博物館2階の常設展示室に展示してあります)。
 今日の観察会は、門田先生はじめ、補佐役の多くの方々が、下見や埋もれた枕状溶岩の掘り出しをしてくださったおかげで、大変充実した一日となりました。ありがとうございました。(
H. I. )
                    

左が上位の枕の重なりがくっきり見える
▲県立丹沢湖ビジターセンターで、門田先生から、枕状溶岩や流紋岩などの基礎知識を解説いただく。 ▲水で濡らすと枕の重なりがくっきりし、左が上位とわかる。  
枕状溶岩を歯ブラシで磨き急冷層を確認 枕状溶岩の露頭を観察する
▲枕状溶岩の転石を歯ブラシで磨き急冷相を確認する。 ▲枕状溶岩の露頭を観察する。
枕の積み重なりが良くわかる。左側が上位 転石の枕状溶岩に楔を入れて割る
▲大きな枕の積み重なる様子が良くわかる。左側が上位。 ▲転石の枕状溶岩に楔を入れて割る。
大野山沢の押し出しの中からガーネット流紋岩を探す 河床の砂をパンニングしてガーネットを探す
▲大野山沢の押し出しの中からガーネット流紋岩を探す。 ▲河床の砂をパンニングしてガーネットを探す。
ガーネット流紋岩 西丹沢産の流紋岩から取り出されたガーネット
▲ガーネット流紋岩。 ▲西丹沢産の流紋岩から取り出されたガーネット。
山北町立丹沢森林館で門田先生からまとめをしていただく 2階常設展示室に展示された枕状溶岩
▲山北町立丹沢森林館の展示室で、門田先生からまとめをしていただく。 ▲2階常設展示室に展示された枕状溶岩。


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