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相模川の生い立ちを探る会 2006年6月「西丹沢−細川谷のガーネット流紋岩」

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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第173回 2006年6月25日 

西丹沢・細川谷のガーネット流紋岩


西丹沢細川谷のガーネット流紋岩

今月は神奈川県立生命の星・地球博物館から山下浩之学芸員をお招きして、西丹沢の細川谷のガーネット流紋岩をご案内いただきました。この流紋岩は240万年前に東西方向に貫入した岩脈で、丹沢では珍しいガーネットをたくさん含んでいます。この流紋岩岩脈が結晶片岩を貫いている接触部の様子、流紋岩中のガーネットの産状などを中心に観察しました。
 細川谷入り口では文象斑岩(グラノファイヤー)が見られ、典型的な文象構造がないことから変トーナル岩と呼んだ方がいいでしょうという、山下先生のご説明でした。沢に入る前に、杉林の中で、このガーネット流紋岩の成因、化学組成の特徴、マンガンが異常に多いこと、テクトニクス上の位置づけなどについて解説いただきました。
 細川谷では、グリーン・タフが高圧の変成を受けて、角閃片岩になっている露頭を観察しました。母岩は火山礫凝灰岩のようで、走向・傾斜から考えると、逆転しているものと思われました。 さらに、上流では、この角閃片岩を貫いている流紋岩岩脈を観察しました。1mm大の24面体の結晶からなるアルマンディン(鉄礬ザクロ石)がたくさん含まれていました。流紋岩岩脈は、南北性の断層により、50m以上変位していました。昼食後、細川谷の支谷に入り、前地点から連続すると思われるガーネット流紋岩をご案内いただきました。そこでは、赤褐色の鉄礬ザクロ石に橙色の満礬ザクロ石(スペッサルティン)がくっついている産状を教えていただきました。
 その後、丹沢湖畔の悪沢に行き、マンガンに富んだ紅簾片岩の露頭を観察しました。幅は1mに満たないものでしたが、赤紅色の紅簾片岩は、周囲の緑泥片岩に比べて、きれいでした。
 ガーネット流紋岩は、丹沢山地の衝突後、プレート境界がジャンプした後に貫入したものであること、マグマの形成に泥質物質やマンガン鉱床が関与しているらしいことなど、伊豆弧の衝突と関連したテクトニックなお話をいろいろお聞きすることができました。                      (S.M.)
                    

沢に入る前に説明を受ける 角閃片岩露頭の前で熱心に観察
▲沢に入る前に、山下先生より説明を受ける ▲角閃片岩の露頭を前に熱心に観察する会員。
ガーネットの多く入る流紋岩を探す 河床の砂をわんがけしてガーネットを取り出す
▲流紋岩岩脈の露頭では、流理の見えるところもある。ガーネットを多く含む流紋岩を探す。 ▲流紋岩露頭の河床の砂をパンニング(椀がけ)してガーネットを取り出す。
樹枝状満礬ザクロ石を探す 鉄礬ザクロ石の24面体結晶
▲この露頭の鉄礬ザクロ石にはマンガンに富む満礬ザクロ石が樹枝状につく。 ▲流紋岩から取り出した鉄礬ザクロ石。大きさは1mmで小さいが、24面の結晶形がよく判る。
流紋岩と角閃片岩の接触部 緑泥片岩中の紅簾片岩
▲流紋岩と角閃片岩の接触部。角閃片岩の片理に調和した方向で貫入している。 ▲悪沢の紅簾片岩の露頭。紅簾片岩の紅色はマンガンが関与している。


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