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発見!ひらつかの民俗
第9回 神棚のだるまさん(2010年8月10日実施)
秦野市にたくさんのだるまを神棚に並べているお宅があるとのことで、秦野市教育委員会に案内してもらった。柳川のW家に行くと、神棚に6つのひげだるまが並んでいた。W家では昔からずっとひげだるまを買っているという。ひげだるまは金目(きんめ)だるまともいい、目は金色、ひげを植え付けただるまで、相州独特のだるまである。6つとも平塚市内の3軒の達磨店が製造したひげだるまであった。
W家では、毎年12月31日に秦野の四つ角に立つだるま市で新しいだるまを買う。だるまの底へ年を書き、元日に神棚へ上げる。家族が一年間無事で過ごせるようにと祈願する。金目なので目は入れない。毎年だるまの号数を上げていき、大きくなったら再び5、6号の小さなだるまに戻し、また大きくしていく。並べきれなくなったら年末の煤払いのときにいちばん古いだるまを下げる。1月14日の道祖神の日に、煤掃きや注連縄などと一緒に古いだるまを持っていき、セートバライでお焚き上げをする。
▲秦野市柳川にて |
一般に、だるまは毎年少しずつ大きなものに買い替える習慣がある。同じサイズのものでも良いという。だるまは1個だけ飾る家もあれば、W家のように複数のだるまを並べる家もある。平塚市上吉沢のH家では、大神宮棚に7つのだるまを並べ、これを七福神としている。H家では毎年12月29日の金目観音の歳の市で買い求める。小田原市桑原のO家もすべてひげだるまである。12月18日の飯泉観音のだるま市で買う。金目だが左目に梵字が記されており、飯泉観音で開眼供養を受けたものであることがわかる。
▲平塚市上吉沢 | ▲小田原市桑原(髙橋由季氏提供) |
『大磯町史8別編民俗』によると、大磯町西小磯のS家では、前年よりも少し大きなダルマを購入し、最大のダルマに達したら次の年からは再び、小さなダルマから購入していく。国府新宿のS家でも同様に小さなダルマからだんだんと大きなものを買っていくが、それが7つたまると、一番小さなものをセートバレーで焼き、翌年から順次繰り返していく。西小磯のE家では、毎年一個ずつ購入するが、そのダルマが8つたまると、一番古い順に一つを道祖神に納めた。
七転び八起きから来ているのだろうか、並べるだるまの数は7つか8つが多い。サイズは毎年大きくしていき最大になると再び小さなだるまから始めるか、毎年同じサイズのだるまを決まった数並べる。購入しただるまの片目を黒く塗って神棚に上げ、一年経ったら感謝を込めてもう片方の目を塗り、順次道祖神に納めてお焚き上げをする。
だるまは福を招く縁起物。たくさんのだるまさんに見守られていると心が落ち着いてくるようだ。信仰は気持の問題。小さなだるまに大きな願いをかけても良い。一家にひとつ、まずは小さなだるまを飾ってみませんか。
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