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発見!ひらつかの民俗
第2回 下吉沢の山と信仰(2009年5月8日)
下吉沢の石仏にお詳しいYさんの案内で山を歩いた。朝から雨の中、下吉沢大下の丘陵から松岩寺、山王社、山の神、上吉沢の八剣神社へと歩いた。山中の沢沿いの道でワラビの群生地に出会った。すでに葉が開きかけ食べるには遅いが、濃い緑が鮮やかだ。4月中頃が摘み旬と思われる。
▲下吉沢には幾筋もの沢が流れている | ▲松岩寺裏の畑から相模湾を望む |
松岩寺裏の畑から山王社へと向かう。標高140mの雑木林の頂に山王社の石祠が祀られている。八剣神社の世話人が4月中旬の休日に清掃しお参りしている。周辺に庚申塔や大日如来等の石仏がある。大日如来は一見すると観音様のような優美な姿だが、智拳印を結ぶ金剛界の大日如来である。銘文を読むと、宝永8年(1711)に六十六部札塚供養のために建てたとある。「施主二宮氏」とあり、戦前の頃は山王社のお祭りで下宮下の二宮さんが子どもたちにアメを配っていたといわれ、山王社は二宮家が中心になって祀っていたのではないかとYさんは言う。
▲六十六部供養の大日如来 | ▲山王社と石仏 |
山王社から霧降の滝方面へ分岐する道があり、その分岐点をカマトギバと言ったという。草刈りの鎌を研いだ場所だったのだろうか。山は燃料や落ち葉の供給源であった。Yさんも子供の頃、よくこのあたりの山へマキヤマの手伝いに来たという。今は手入れをしないので藪が茂り、木を伐採しないので大きな木ばかりになっているという。
山王社から南へ雑木林の快適な道を歩く。少し整備すれば、ハイキングコースとして親しまれるような気分の良い道だ。ほどなくして標高約180mの山の神に出る。大きな木の根元に石祠が二基、ひっそりと祀られている。山の神への信仰は、元々山そのものや大木への畏敬の念から発した。この山の神はそんな原初的な風景を見る思いがする。4月中頃に山王社と一緒にお参りがなされている。
カマトギバまで戻り、霧降の滝方面へ下る。下吉沢の山は深く、今も冬期にはハンターが狩猟に来る。アシナガというキノコが自生しており、これをナスと油炒めにして、ソバのおつゆに入れて食べるととてもうまいという。山中の所々に空いた大きな穴は戦時中に軍がこしらえた防空壕であるという。Yさんは子供の頃に壕の中へ入って遊んだが、その際は酸欠にならぬようローソクを点けて入ったという。
今回は石仏の所在地をYさんから教えてもらうことが当初の目的だったが、実際に山を歩きながらお話を聞くことで様々なことを具体的に知ることができた。
▲山の神 | ▲山中の防空壕跡 |
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