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東丹沢のタマネギ石(1) -タマネギ石とは-
■タマネギ石とは
東丹沢の厚木市七沢の鐘ヶ岳登山道などでは、幾重にもタマネギの皮をむいたような岩石がよく見られます。大山三峰や大山への登山道等にもよく露出し、ボタン岩等とも称されます。こうした石を一般にタマネギ石、この皮をむいたような構造をタマネギ状構造といいます。こうしたタマネギ石は岩石の風化過程で形成されたものです。
タマネギ石は一般に3方向の節理面(割れ目)で囲まれています。この節理面に囲まれたタマネギ石と節理との交点には、丸みのある殻皮が認められます。タマネギの殻皮は、この節理面の交点部分で最も厚くなっています。殻皮1枚はタマネギの皮のような曲面形態をとり、それが、幾重にも重なって殻皮を構成します。タマネギ石の中心には風化の進んでいない核が必ず認められます。殻皮の枚数(幅)、核の大きさ、タマネギに占める核の割合には様々なものがあり、風化の進行のいろいろな過程を見ることができます。風化の進行に伴って、親タマネギの中に子タマネギが、子タマネギには孫タマネギが形成されます。2つの子タマネギの間や孫タマネギの間には、副節理が認められます。
■タマネギ石と岩相
タマネギ石のできやすい岩相は、風化の進んだ、粒子の揃った塊状の砂岩質な岩石です。丹沢では、風化して褐色を帯びた粗粒凝灰岩〜火山礫混じり粗粒凝灰岩〜火山礫凝灰岩、凝灰質粗粒砂岩〜細粒砂岩によく観察されます。これらはいずれも火山性タービダイト(海底の乱泥流堆積物)です。細粒凝灰岩や火山角礫岩・凝灰角礫岩など、極端に細粒ないし粗粒な凝灰岩には、タマネギ石はほとんど見られません。細粒凝灰岩や凝灰質泥岩では、弱風化の場合に小さなタマネギ石が見られることがありますが、風化の進行が早いので縮緬状となることが一般的です。珪酸分に富むデイサイト質の細粒・粗粒凝灰岩や軽石質凝灰岩では全くタマネギ石は見ることができません。
→タマネギ石の特徴
→タマネギ石と風化
→タマネギ石のでき方
引用文献 森慎一(2004) 平塚市博物館研究報告「自然と文化」27号
▲2方向の節理面の中から10cm大のタマネギ石がみえる。さらにもう1方向の節理が発達する | ▲節理に囲まれたタマネギ石。内側ほど丸みを帯びる。 |
▲節理面に沿って大きな殻被が生じ、さらに多 くの子タマネギが生じている。 | ▲親タマネギの中に子タマネギが生じている。 外側に親タマネギの殻皮が見える。 |
▲2連のタマネギ石。2つの核を取り囲んで殻皮がよく発達する。外側の殻皮が厚い。 | ▲タマネギ状風化のない節理ブロックを割ると隠れたタマネギが現れる。 |
▲核皮が剥けたタマネギの核。球形を呈してい る。 | ▲殻皮の重なり方に注意。粗粒な岩石は核皮も厚い。 |
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