わたしたちは「相模川流域の自然と文化」をテーマに活動している地域博物館です

6 岩石と地形
6 岩石と地形



●岩石と地形
 相模川流域の地形は丹沢山地や伊豆地塊が本州に衝突し、関東山地や丹沢山地が急激に隆起して作られました。流域の山々は比較的新しい時代に形成されたもので、急峻な壮年期の地形をしています。流域の地形は岩石の硬さや地層の構造、断層の存在などをよく反映しています。相模川にかかる滝には、富士火山の溶岩流の末端にできているもの、断層運動によって生じたものが多く見られます。第四紀という最も新しい時期に形成された富士や箱根には、火山特有の地形がよく見られます。
 ここでは、相模川流域の大地がどのような岩石からできているのか、どのように地形と関係しているのかを、流域の地質図と、様々な地点での写真・実物標本をもとに紹介します。


かつてのプレート境界を示す
牧馬─煤ヶ谷構造線の断層崖(清川村尾崎)


●地形を作る岩石
 こうした相模川流域の大地を作る岩石は堆積岩・火成岩・変成岩に分けられます。堆積岩には海底に砂や泥が堆積してできた砂岩・泥岩の他、海底火山の噴出物が堆積した凝灰岩があります。凝灰岩は丹沢山地に広く分布し、様々な粒径のものがあります。マグマが固結した火成岩には、西丹沢に分布する地下深所で固化したトーナル岩類(花崗岩の中でカリ長石をほとんど含まないもの)や丹沢のかつての溶岩の他、富士や箱根火山の溶岩や火山砕屑物が多量に見られます。変成岩は西丹沢のトーナル岩体の周りに分布し、白石沢には大理石やベスブ石などの接触変成を受けた珍しい岩石が見られ、天然記念物となっています。

相模川に沿って流れた富士の溶岩流の末端に
位置する田原の滝(都留市田原)


●大地の壁
 「大地の壁」のコーナーでは、岩石を作る鉱物にスポットを当て、丹沢の鉱物・沸石の仲間・鉱物の結晶形・金属を主成分とする鉱物・珍しい鉱物を陳列しています。きれいな鉱物にもいろいろな形があり、様々なでき方があります。

「鉱物のいろいろ」のコーナー

●丹沢の鉱物
 丹沢山地は、海底火山から供給された火山噴出物が厚く堆積した凝灰岩類からなります。この凝灰岩類は熱水の変質を受けて緑色を呈しており、グリーン・タフと呼ばれています。この緑色は緑泥石・緑簾石・セラドン石などの変質鉱物からなります。粗粒な凝灰岩の空隙や玄武岩溶岩の気孔には、各種の沸石や石英・玉髄・方解石・ブドウ石などの鉱物がよく見られます。 西丹沢の地下深所に貫入した深成岩類中には、石英脈や黒雲母・角閃石の巨晶が見られ、深成岩と石灰岩との接触部にあたる山北町白石沢では、珍しい菫青石(いぼ石)や、ベスブ石が産します。

●沸石の仲間
 沸石は水分を含み、加熱すると発泡する性質があることから名付けられました。沸石は、堆積物が地下に埋没した弱い圧力の条件下で、凝灰岩中の火山ガラスが交代されたり、熱水溶液が岩石の隙間に侵入したりして生じます。脈状をなすことも、溶岩の気孔や空隙を埋めることもあり、丹沢でも最もよく見られる鉱物のグループです。透明〜白色で、数多くの種類が知られています。沸石に含まれている結晶水は加熱して脱水しても構造が壊れず、水分のあった所は隙間として残り、再び水やガスやイオンを吸着する性質があります。この性質を利用して、脱臭剤や吸着剤などに利用されています。

スコレス沸石(山北町玄倉産)針状の長板状結晶
が放射状に集合していて白い球を作りビロード状
をなす。凝灰岩の空隙に産している。


スコレス沸石の接写(津久井町神ノ川林道産)
熱変成を受けた凝灰岩中の網目状に発達した
隙間に、スコレス沸石の針状結晶が放射状に
集合している。

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