7 海と山を結ぶ鳥アオバト


●照ヶ崎のアオバト
 大磯町の照ヶ崎海岸は、初夏から秋にかけて、アオバトという美しい緑色のハトの群れが海水を飲みに訪れることで知られています。
 野鳥観察グループ「こまたん」の行った調査によると、照ヶ崎に飛来するアオバトは多い日には1日のべ2000羽を越え、群れの最大数も300羽を数えることがあります。
 海の荒れた日には、波に飲みこまれる事故も起こり、アオバトがなぜ危険をおかしてまで海水を飲みに来るのかに興味がそそられます。


照ヶ崎のアオバト(二階堂賢氏撮影)

 現在までの調査で確認されていることの一つは、照ヶ崎を訪れるアオバトの多くは丹沢山地から飛んで来るにちがいないということです。アオバトは丹沢山地のブナ帯で繁殖していますが、そのあたりからの数十キロを通ってくるのです。照ヶ崎で採集されたアオバトの糞から、山地にしか見られないミヤマザクラやヤマブドウのたねが見つかったことも、丹沢から飛んでくることの証拠の一つとなりました。
 アオバトは夏鳥として渡来すると言われてきましたが、県内でも冬期に観察されることがあり、西日本では冬期に各地で普通に見られています。しかし、冬期には海水を飲んだ記録はなく、季節によってなぜ習性が変わるかも今後の研究課題です。このようにアオバトは、身近な所で見られる野鳥の中でも謎の多い興味深い種類なのです。

参考文献:『アオバトのふしぎ』(こまたん,2003.HSK)



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