地球科学野外ゼミ 第14回 2019年7月7日(日) 野外:横浜【たたら遺跡と前弧海盆堆積物】

「地球科学野外ゼミ」活動記録

第14回 2019年7月7日(日) 野外:横浜【たたら遺跡と前弧海盆堆積物】



■ コース:港南台駅→上郷深田遺跡→瀬上沢 化学合成化石群集露頭→瀬上市民の森→庄戸公園 化学合成化石群集露頭→庄戸3丁目北バス停

▲およそ155万年前の海底に生息していた化学合成化石群集の露頭。植生で隠れた崖面には数千個体もの貝化石があります。


 今回は、栄区上郷町にある製鉄遺跡である上郷深田遺跡を観察するとともに、周辺に露出する更新世の地層である上総層群およびそこにみられる特殊な貝化石群集を観察することが目的でした。

 港南台駅に集合した後、港南台駅から南に向かって歩き、下末吉期(約13万年前)の段丘から谷あいの低地へ下る坂の途中にある、上郷深田遺跡の発掘現場に行きました。上郷深田遺跡は、奈良時代から平安時代にかけて利用された、関東でも最大級の製鉄遺跡とされています。路上からは山の斜面の炉跡が見つかった場所を観察することができました。大きな谷あいに面した急斜面に炉があったということで、谷からの風を利用した登り窯のような構造であったと思われます。現地に設けられた遺跡の解説板には、製鉄の原料に周辺の川から採れた砂鉄が用いられている可能性について触れられていました。

▲奈良時代の製鉄炉があった上郷深田遺跡発掘現場。登り窯のような構造の炉が崖の斜面に発見されています。 ▲遺跡近くを流れるいたち川支流の川底の様子。砂鉄はあまりみられませんでした。

 次に坂を下り、自然公園として緑地が残る「瀬上市民の森」の小柴層の露頭に行きました。瀬上市民の森周辺に露出する上総層群小柴層下部は、およそ160~150万年前の深海~大陸棚縁辺で堆積した砂や泥からなる地層です。市民の森の入り口では、二枚貝化石が数千個体も密集した露頭を観察しました。この露頭にみられる貝化石は、海底から湧出するメタンを含む湧水に依存して形成された生物群集(化学合成群集)だったと考えられています。また周辺の河川では、上総層群を削って流れる川底の砂を採取し、ごくわずかな量の砂鉄が含まれていることを確認できました。
 さらに瀬上市民の森の谷を南東に上り詰めて、小柴層より下位の大船層の露頭でも、化学合成群集の露頭を観察しました。雨天のため、観察はここまで中止し、庄戸北バス停で解散しました。

▲化学合成化石群集の露頭の前で解説を聞く会員。


写真撮影:地球科学野外ゼミ会員

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