地球科学野外ゼミ 第10回 2019年3月23日(土) 野外:三ツ峠周辺【丹沢衝突期のトラフ充填堆積物】

「地球科学野外ゼミ」活動記録

第10回 2019年3月23日(土) 野外:三ツ峠周辺【丹沢衝突期のトラフ充填堆積物】



■ コース:三つ峠駅→柄杓流川河岸→三ツ峠さくら公園→神鈴の滝→三つ峠駅

▲丹沢衝突期のトラフ充填堆積物である桂川礫岩からなる神鈴の滝。


 今回の観察会の目的は、伊豆―小笠原の火山性島弧の付加体である御坂山地および丹沢山地を作る凝灰岩と、それらが本州に衝突付加する際、本州との境界に堆積したトラフ充填堆積物を観察することでした。

▲三つ峠山周辺の地質図(佐藤, 2013に加筆)。



 最初に三つ峠駅に集合しガイダンスを行った後、三つ峠登山道方面に向かって北東に向かいました。山祇公園付近を流れる桂川(相模川)の支流である柄杓流川の河岸で、凝灰岩の露頭を発見しました。これは、火山噴出物からなる小沼層とされています。小沼層は、丹沢が中新世頃に南の海の海底火山だった際に、海底火山の周りに堆積した者と考えられています。
 次に柄杓流川沿いに北上して、三ツ峠さくら公園内の川底で、トラフ充填堆積物である古谷砂岩層を観察しました。緑色の凝灰質な砂からなる古谷砂岩層は小沼層よりも上位の地層で、丹沢が本州に近づきトラフ(舟状海盆)が形成され、そこが埋められ始めた時期の堆積物と考えられています。

▲小沼層の露頭。青緑色のデイサイト岩質細粒火山灰層からなっていました。 ▲柄杓流川河床の古谷砂岩層の露頭。地層の縞模様(層理面)がはっきりしているのが特徴的でした。

 非常に気温が低かったため、急いで三つ峠登山道に向かって山を登ると、古谷砂岩層を切るように、さらに上位のトラフ充填堆積物である桂川礫岩層が柄杓流川の河床に見えました。そこからすぐ上流にある滑滝である神鈴の滝では、桂川礫岩層を間近に観察できました。礫岩の礫種は、丹沢や御坂の凝灰岩と、関東山地を作る砕屑岩やチャートからなっており、本州弧と伊豆-小笠原弧の両社からの堆積物の供給を示していました。このことから古谷砂岩層堆積時より丹沢がさらに本州に近づいたころのトラフ充填堆積物であることがうかがえました。


▲神鈴の滝のやや下流の川底に見える、古谷砂岩層と桂川礫岩層の境界。 ▲上流からみた神鈴の滝。滝をつくる桂川礫岩層が円い礫からなる様子が分かります。

 雪が降り始める中さらに山を上ると、だるま石付近で、御坂山地を作る西八代層群白滝層の露頭を見つけました。デイサイト質の火山礫凝灰岩からなる地層で、変質による鮮やかな緑色が特徴でした。桂川礫岩層とは、桂川断層で境されていると、地質図では示されていましたが、現場で断層そのものを確認することはできませんでした。雪が激しかったため、急いで下山して三つ峠駅でまとめを行い、解散しました。

▲白滝層の露頭。 ▲白滝層の凝灰岩の表面は風化で白茶けていましたが、割ると鮮やかな緑色をしていました。


引用文献:佐藤興平, 2013, 山梨県初狩の高川山安山岩体:K-Ar年代の予察的検討と南部フォッサマグナの構造発達史の考察. 群馬県立自然史博物館研究報告 17, 87-98.

写真撮影:地球科学野外ゼミ会員

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