わたしたちは「相模川流域の自然と文化」をテーマに活動している地域博物館です

地球科学野外ゼミ 第7回 2018年11月28日(日) 野外:鎌倉【鎌倉の地層と砂鉄の起源】

「地球科学野外ゼミ」活動記録

第7回 2018年11月28日(日) 野外:鎌倉【鎌倉の地層と砂鉄の起源】



■ コース:七里ガ浜駅→七里ガ浜海岸→霊光寺→七里ガ浜東5丁目→稲村ケ崎5丁目→鎌倉海浜公園→稲村ケ崎駅

▲砂鉄や有色鉱物でいっぱいのために黒くみえる、稲村ケ崎海岸の砂浜。


 七里ガ浜から稲村ケ崎にかけての海岸には、鎌倉時代から使われていたともいわれる砂鉄が堆積していることが知られています。過去の研究で示されている神奈川県東部における砂鉄の分布は、三浦層群と呼ばれる800~250万年前の海成層の分布に概ね一致することから、これらの砂鉄の起源は恐らく三浦層群中の火山灰層にあることが推定されますが、起源についてはっきり明示した文献はありませんでした。そこで今回の観察会は、これらの海岸に流れ込む川が砂鉄の供給源であると仮定した上で、川の上流に分布する三浦層群を観察し、砂鉄の起源を探すことが目的でした。

▲神奈川県西部の砂鉄の分布(増井, 1952)。



 まず七里ガ浜駅に集合したのち、七里ガ浜の海岸で、海浜砂の砂鉄を観察しました。海岸の波打ち際には黒色の粒子が濃集しており、そのうち半分程度が砂鉄(磁鉄鉱などの強い磁性をもつ鉱物)で、残りは暗緑色や黒色の有色鉱物でした。砂鉄は粗粒砂程度の大きさ(およそ0.5~1㎜程度)が主でした。七里ガ浜の海岸に流れ込む行合川の河口には黒色の砂が濃集しており、砂鉄が上流から運ばれてきたことが示唆されました。

▲七里ガ浜海岸の様子。波打ち際のやや暗色の部分に砂鉄が集まっています。 ▲七里ガ浜海岸にそそぐ行合川河口にも、砂鉄が集まっていました。

 次に、行合川の上流の谷を歩き、三浦層群逗子層(泥岩層;下位)および池子層(砂質泥岩層;上位)の露頭を観察しました。中でも、七里ヶ浜ゴルフ場付近の逗子層の露頭では、磁性鉱物をわずかに含む火山灰層がみられました。このような三浦層群中の火山灰層は、七里ガ浜の海岸に砂鉄を供給する給源の一つである可能性があります。
 その後、稲村ケ崎の海岸に行き、海岸の砂鉄と海岸に露出する逗子層の露頭を観察しました。稲村ケ崎海岸は、七里ガ浜とは比較にならないほど砂鉄が濃集しており、一方でその粒度は七里ガ浜よりやや細かいようでした。


▲三浦層群逗子層の露頭。深海で堆積した泥岩からなります。 ▲三浦層群池子層の露頭。逗子層よりも上位の地層で、逗子層よりも砂っぽく(砂質泥岩)、火山灰層が多く挟在します。
▲逗子層中に狭在する軽石質火山灰層。 ▲砂鉄と有色鉱物で真っ黒な稲村ケ崎海岸。

 今回の観察では、砂鉄が濃集する海岸の上流にある三浦層群の露頭を観察しましたが、観察した範囲では、特別にたくさん砂鉄を含む層は観察できませんでした。とはいえ露頭を見ることができた範囲はわずかだったので、今後も鎌倉砂鉄の給源調査を継続し、なぜ鎌倉の海岸に砂鉄が多いのかを調べていきます。

引用文献:増井次夫, 1952, 砂鉄の堆積機構について. 横浜国立大学理科紀要 第ニ類 生物学・地学 (1), 79-86

写真撮影:地球科学野外ゼミ会員



活動の記録へ戻る