地球科学野外ゼミ 第6回 2018年9月23日(日) 野外:相模湖【本州弧の付加体堆積物と相模川の段丘】

「地球科学野外ゼミ」活動記録

第6回 2018年9月23日(日) 野外:相模湖【本州弧の付加体堆積物と相模川の段丘】



■ コース:相模湖駅→相模湖公園→相模ダム→相模湖記念館→相模湖駅

▲相模湖を望む。


 相模川上流域にある相模湖は、火山島だった丹沢が約500万年前に本州に衝突付加した際、本州と丹沢の境界となった場所にあるダム湖です。このため、相模湖周辺には、本州弧をなす地層(相模湖層群)、火山島であった丹沢をなす地層(丹沢層群)、丹沢と本州の間の海溝に堆積した地層(愛川層群)、衝突時に生じた火成活動に伴い堆積したと推定される地層(名倉玄武岩)など、様々な地層がみられます。今回は、相模湖北岸から東岸を歩き、本州弧をなす相模湖層群の地層や、地層を切る断層、相模川が作った段丘地形などを観察しました。



 最初に、相模湖の北に位置する相模湖駅周辺で、約4万年前の段丘地形を観察しました。相模湖駅を中心に東西約1㎞、南北約500mの楕円形に広がる平坦面は、約2万年前の相模川の段丘面(田名原面)です。
 次に段丘南縁の段丘崖に沿って南東に歩いていくと、民家下の崖に砂岩層の露頭がありました。露頭は中粒砂岩が主体で、一部の層準には、黒色の泥岩の偽礫が含まれていました。これは地質図上では、砂岩と泥岩の互層からなる権現山ユニットとされています。権現山ユニットは、本州をなす付加体堆積物である相模湖層群(2000~3500万年前)のうち、下位を占める地層です。また相模湖の北東岸でも、砂岩層の露頭が確認でき、北岸側で見た権現山ユニットとよく似ていました。
 一方で、相模湖層群の上位を占め、砂礫岩からなるとされる瀬戸ユニットは、相模湖東岸に分布するとされているもののこの日は確認することはできず、権現山ユニットとの岩相の比較ができませんでした。

▲相模湖北岸側の道路沿いにみられた砂岩層の露頭。相模湖層群の権現山ユニットとされています。 ▲相模湖北東岸の砂岩層の露頭。こちらも権現山ユニットとされています。

 また、相模湖北岸の水際には、丹沢衝突期の火成活動で堆積した名倉玄武岩が分布するとされていますが、その範囲で露頭を観察したところ、泥岩(黒色頁岩)からなっており、砂泥互層である権現山ユニットのうち、泥岩部であるように思われました。これは既存の地質図による区分とは明らかに異なっていることがわかりました。このように、今回の観察では、相模湖周辺での既存の地質図の区分や分布が、実際とは異なっている可能性がある箇所をみつけることができました。


▲相模湖北岸の水際にみられる泥岩の露頭。20万分の1地質図上では名倉玄武岩とされていますが、明らかに玄武岩質ではありません。 ▲相模湖北岸の別の場所にみられた泥岩の露頭。名倉玄武岩は今回の観察では相模湖北岸では観察できませんでした。

写真撮影:地球科学野外ゼミ会員

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