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地球科学野外ゼミ 第4回 2018年7月21日(土) 野外:洒水の滝【トラフ充填堆積物と断層地形】

「地球科学野外ゼミ」活動記録

第4回 2018年7月21日(土) 野外:洒水の滝【トラフ充填堆積物と断層地形】



■ コース:田名バスターミナル→烏山用水→水郷田名→大島古清水上組のヤツボ→神澤の滝→大島水場のヤツボ→日々社バス停

▲相模川と沖積低地の上に広がる町。


 相模原市田名周辺の相模川中流域には、流域で最も古い地質帯である本州弧の付加体(相模湖層群;約2000~3500万年前)やその上位に重なる、丹沢衝突以降に、プレート境界付近の海底に堆積した砂や泥からなる地層(中津層群;約350~200万年前)がみられます。さらに、これらの地層の上には約8万年前以降、流路を変えながら流れた相模川の名残である段丘堆積物が重なっています。この相模川の流路の変化は、河岸段丘として地形にも残されています。
 今回の観察では、田名周辺の地層や段丘地形、段丘崖から湧く湧水などを観察することが目的でした。


▲田名上空から見た相模川左岸の段丘地形と、相模川のかつての流路。



 最初に田名バスターミナルに集合した後、西の相模川方面へ向かいました。バスターミナル周辺の平坦な地形は、相模川が作った段丘のうち、およそ3万年前に形成された面である田名原段丘(田名原面)でした。そこから西へ向かうと、緩やかな傾斜があり、ごく狭い平坦面が現れました。これが陽原段丘でした。陽原段丘の段丘崖からは、現在の相模川と、相模川が1万年前以降につくった沖積低地を見下ろすことができました。
 陽原段丘から沖積低地へと下る段丘崖の坂(白坂)の途中では、中津層群清水層の泥岩露頭を観察できました。清水層は、中津層群中部の地層で、水深100~130 mで堆積した地層とされています(Ito, 1985)。

▲相模野台地周辺の段丘の分布(相模原市地形地質調査会, 1984に加筆)。 ▲陽原段丘の段丘崖にみられる中津層群清水層の泥岩露頭。

 沖積低地に降りて、相模川に架かる高田橋を目指して歩きました。途中、低地をながれる相模川の水を引いた用水路である烏山用水(新掘)を観察しました。もとは江戸期につくられた用水で、近年の改修と整備により、相模原の農村風景百選にも選ばれた景観地となっています。 更に南西へ進んで、相模川に架かる高田橋へとやってきました。高田橋がかかる地点周辺は、水郷田名と呼ばれる景観地であり、相模川八景の一つにも選ばれています。また、相模川に橋が架けられていなかった江戸期には「渡し」があった場所でもあります。
 高田橋の右岸側のたもとには、中津層群神沢層が露出していました。神沢層は清水層より下位の地層で、豊富な化石を含むことで知られています。この日は、高校生が化石採集を行っているのに出会いました。


▲遊歩道が整備された烏山用水。 ▲景観地として有名な水郷田名。奥に見えるのが高田橋。
▲相模川河岸の神沢層の露頭で化石採集をする高校生の皆さん。 ▲神沢層から採取された貝化石。

 相模川左岸側へ戻り、上流方面(北)へさかのぼって歩きました。今度は低地から陽原面、そして田名原面へと坂を登っていきます。途中には、相模川のかつての川底に堆積した段丘堆積物(段丘礫層)が見られました。
 さらに北側では、段丘崖にヤツボと呼ばれる湧水が湧いているのを観察できました。これは、台地に降った雨が地下に浸透し、粗い段丘礫層を通って崖から湧き出したものです。
▲陽原段丘の段丘礫層。およそ3万年前の相模川の河床礫です。これより上には3万年前以降に堆積したローム層が堆積しています。 ▲大島水場のヤツボと呼ばれる、段丘礫層からの湧水。石垣の裏に段丘礫層の地層が隠れていると思われます。

 さらに北へ進んで、再び相模川の低地へ降りると、中津層群小沢層の大きな崖が現れました。神澤の滝と呼ばれるこの崖は、砂岩と礫岩からなっていました。さらに上流には、中津層群と下位の相模湖層群との不整合が存在するはずですが、今回は時間の都合で断念し、ここで観察を終えました。

▲神澤の滝。全体的には砂岩からなりますが、円礫からなる礫岩層が砂岩の中に挟まれていました(写真の真中から少し下にかけての粗い部分が礫岩層)。




引用文献:Ito M., 1985, The Nakatsu Group A Plio-Pleistocene transgressive nearshore to slope sequence embracing multiple slump scars in southeastern margin of the Kanto mountains central Honshu Japan. 地質学雑誌 91, 213-232.
     相模原市地形地質調査会 (1985) 相模原の地形地質調査報告書 第2報. 相模原市.

写真撮影:地球科学野外ゼミ会員



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