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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録
第267回 2015年5月10日 伊勢原市大山~蓑毛
■ テーマ:蓑毛越・春岳沢の地層と地形
■ コース:伊勢原市「大山ケーブル」バス停~ケーブルカー「大山ケーブル」駅~「阿夫利神社」駅~二重の滝~阿夫利神社下社~西の峠~春岳沢~西の峠~尾根道分岐~蓑毛バス停
今回は、大山の丹沢層群を観察すること、大山の南西斜面を流れる金目川の源流の滝と湧水をみることが目的でした。
まず「大山ケーブル」バス停前で、今回の目的の確認と新人会員の紹介を行いました。バス停からケーブルカーの「大山ケーブル」駅にかけて続くとうふ坂から、大山川とその河床の丹沢層群を観察しました。ケーブルカーの「阿夫利神社駅」につくと、阿夫利神社下社下の広場にて、野崎先生から今日の全体の行程と配布資料について説明を受けました。
下社下の広場から北に50 m足らずのところに黒色や赤色の小さな火山礫の入った玄武岩質粗粒凝灰岩の露頭があり、さらに200 mほど先に進んだところには、より粒子サイズが小さい粗粒凝灰岩の露頭がありました。いずれも丹沢層群大山亜層群をなす凝灰岩とのことでした。凝灰岩を観察する際は、構成する粒子の色・形・大きさに注目すること、含まれる火山礫が本質・類質・異質のどのタイプの岩片なのかを明らかにすることが大切であるとの解説を森先生よりいただきました。さらに露頭にみられる面構造には、地層が堆積した層理面と、溶岩が冷却するときにその性質に応じて割れた節理面、大地が隆起するときの応力を反映した節理名があり、この見分けも大切であるとの解説を受けました。周辺は、県指定の天然記念物「大山のモミ原生林」が生い茂る場所で、モミの葉や樹皮、樹形も観察しました。
阿夫利神社下社の前から南東に広がる相模平野を展望した後、西に進んだかごや道では、沸石の細脈の入った凝灰岩を確認しました。
西の峠から一般登山道を外れ、標高800 m付近の横ばいの道を春岳沢へ進みました。途中には丹沢層群大山亜層群の粗粒凝灰岩の露頭が点々とみられました。さらに道を進み、春岳沢で金目川源流である湧水を確認しました。湧水は、丹沢層群の凝灰岩の割れ目から豊富に湧いていました。後ろを振り返ると、南側の展望が開けていました。秦野盆地と大磯丘陵の境が直線的で、そこに渋沢断層が走っていること、右側には大磯丘陵の西縁をなす曽我山の丘陵がみられ、足柄平野との堺に国府津-松田断層走り、この断層が隆起したことで曽我山が丘陵となったこと、などについて森先生から解説がありました。
西の峠に戻り、大山の南尾根の登山道を下ると、真っ白なデイサイト質軽石凝灰岩の露頭が確認できるようになりました。セラドナイトと呼ばれる、軽石が熱水によって変質した青緑色の火山礫も含まれるようになりました。大山亜層群唐沢凝灰岩層中に挟まれていることから、当時の丹沢火山体には、玄武岩質な火山活動とは別に、デイサイト質の火山噴出物も大規模な火砕流によって流れてきたと考えられることを森先生が解説されました。
秦野駅前で先生方にまとめをしていただきました。大山を作っている丹沢層群は、一様の火山活動によって形成されたものではなく、玄武岩質な火山活動をベースにして、デイサイト質の火山活動の影響を受ける、少なくとも二種類の異なる火山活動により成り立っていることが理解でき、有意義な観察会となりました。(Y. H.)
▲道路脇から鈴川上流である大山川を望む(伊勢原市大山 猪股橋) | ▲火山礫混りの玄武岩質凝灰岩からなる大山亜層群の凝灰岩を観察する(伊勢原市大山 下社下) |
▲大山川の源流に近い二重の滝と粗粒凝灰岩の露頭を観察する(伊勢原市大山 二重社) | ▲大山の南東斜面に自生する、モミを主とする大山の原生林(伊勢原市大山 二重社南) |
▲阿夫利神社下社から、南東の相模平野を展望する(伊勢原市大山) | ▲大山亜層群の粗粒凝灰岩の露頭を観察する(伊勢原市大山 かごや道-蓑毛越え分岐部) |
▲白色の沸石脈が入った大山亜層群の細粒凝灰岩(伊勢原市大山西の峠北北西) | ▲岩盤の隙間から湧く金目川の源流を観察する(伊勢原市大山西の峠北北西) |
▲セラドナイトを含むデイサイト質粗粒凝灰岩露頭を観察する(伊勢原市大山西の峠南) | ▲軽石が変質した青緑色のセラドナイトを含むデイサイト質粗粒凝灰岩(伊勢原市大山西の峠南) |
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