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民俗探訪会
相模湾の民俗 第28回 「平塚の漁業を学ぶ」 2014年6月18日

 3月に三浦市三崎の城ヶ島にて相模湾沿岸ぐるっとひとまわりの旅を打ち上げた一行は、2014年度のテーマを「相模湾の漁業を学ぶ」とし、水産関係者からお話を聞いたり、港や船、漁具のようすを観察したりして各地の漁業の実態をじっくりと学ぶことにしました。昨年度までよりも歩く距離はぐっと短くし、その分、中身の濃い学習ができるように心がけていきます。第1回は、地元の平塚からスタート。漁業協同組合の方々をはじめ、時間を割いてお相手をしていただいた方々に感謝を申し上げます。
 ★行程:平塚駅-魚市場・須賀港~竜宮社~平塚新港~庄三郎丸~魚市場(昼食)~高甚商店~お阿弥陀様~海宝寺~長楽寺~三嶋神社~平塚駅  参加者16名

魚市場にて説明を聞く

 訪れた水曜日は魚市場の定休日。市役所農水産課の磯崎さんにご説明をいただく。その概要は次のとおり。
 ここでは毎朝6時から競りが行われる。競りに参加するのは買受人といわれる人たちで、仲買人と買出人の機能を併せ持つ。市場には約130人の買受人が登録されている。買受人の半数以上は市内の魚屋や料理屋で、茅ヶ崎市や伊勢原市、大磯町の人も入っている。実際に毎朝の競りに参加する人数は、私ども民俗探訪会の本日の参加者程度であるという。
 平成24年度の統計によれば、市場の取扱量は約2,300トンで金額にすると約18億円。内訳は干物が869トン(38%)、他の市場から転送される鮮魚が797トン(35%)、地元の水揚げが401トン(17%)、冷凍品が236トン(10%)である。転送される水産物はアワビ、マダイ、ブリなど平塚ではあまり捕れない魚で、小田原や横浜などの市場から転送されてくる。地元で捕れた魚の約8割は本市場へ卸されている。冷凍品はマグロが主で、市場には-45℃の冷蔵庫が設置され、マグロが保管されている。冷凍庫で熟成させるとマグロのうまみが増すのだという。最も高く取引される魚はマグロやイセエビで、イセエビは平塚でも刺網で捕られている。

▲魚市場にて説明を聞く
平塚新港の荷捌場で説明を聞く

 平塚市の漁港には昭和26年に完成した須賀港と、平成12年に完成した平塚新港とがある。現在、主要な漁船は新港に停泊され、須賀港は台風時の避難港などとして併用されている。新港では、平塚市漁業協同組合の舩山さんに、漁業の現況や新港の設備などについてお話をうかがった。
 現在、平塚では定置網が2統、刺網が2隻、シラス船曳網3隻と遊漁船が操業している。

定置網で捕れた魚を選別する台
▲平塚新港の荷捌場で説明を聞く 定置網で捕れた魚を選別する台 
定置網漁船 定置網漁船 遊漁船
定置網漁船 網を巻くためのローラーや、網の中の魚を運ぶクレーンが付いている。
 (左)川長三晃丸、(右)日海丸
遊漁船 浅八丸
定置網の網 定置網の網 シラス船曳網の網
▲定置網の網 網の目に海藻などが付着すると波の抵抗を受けやすくなるため、ときどき網を引き上げて洗う。午前中には網の補修作業も行われる。  ▲シラス船曳網の網 佳栄丸にて。あいにくシラス船曳網の加工屋さんは3軒とも、県のシラス船曳網漁業連絡協議会の会合のためお休みでした。一同残念。
庄三郎丸にて漁業協同組合長のお話を聞く

 平塚市漁業協同組合長の後藤勇さん(庄三郎丸)にお話をうかがう。魚の習性、海の環境変化、これからの都市型漁業のあり方についてなど興味の尽きない話題が満載でした。ここにいくつか紹介させてもらいます。
 シラスとは鱗が出る前のイワシの稚魚ことをいう。すぐに溶けてしまい、氷水に入れておいても翌朝になると目玉しか残っていない。だから、朝に捕って午前中に釜揚げにすると一匹ずつバラバラになるが、午後になって茹でるとくっついてしまう。
 定置網は落とし穴みたいな形をしており、垣網にぶつかった魚は運動場を通って坂を登っていき(登網)、最後に深い所(箱網)へ落ちる。箱網でぐるぐる回っている魚に出口が見つからないように、まだ暗いうちに網を揚げて捕るのである。
 定置網にイワシやサバがたくさん入るときは単一魚ばかりになる。数が少ないときの方が、魚種は多様で値の良い魚が入る。そこが定置網の難しさである。
 昔は町の魚屋さんの数が多かったので競りが成り立ったが、今はスーパーが増えて値が叩かれるようになった。
 温暖化の影響で、水温が上がると海藻が育たずサンゴになっていく。海藻が無いと魚が産卵できなくなり、海藻を食べるサザエやアワビが育たなくなる。また、一般に南方へ行くほど毒のある魚が多く、水温が上がると注意を要する魚が増える。
 庄三郎丸の漁船は三浦市三崎の造船所で造られている。 

▲庄三郎丸にて漁業協同組合長のお話を聞く
本日の釣果 高甚商店にて

 千石河岸の干物屋さん、高甚商店にて店主の高橋裕さんにお話をうかがった。
 写真は燻し蒸籠(いぶしせいろ)といい、今から50年前まで店で使用していた道具である。コンクリート製の竈に薪をくべ、釜にこの蒸籠を何段にものせ、サバ、ソウダガツオ、ムロ(ムロアジ)を煙でいぶし、カチカチになるまで何日も海岸で干し、サバブシ、ソウダブシ、ムロブシをつくった。これらの節類は出汁を取るために用いられた。当時、平塚では4軒くらいが節づくりをしていたという。また、イワシは煮干しにする他、浜へ干して干鰯という肥料にして寒川町の農家などへ売った。節類や煮干しの製造は、値の安い魚を長く持たせる工夫であったという。 

▲本日の釣果
 大きなシイラが釣れた。庄三郎丸にて。
▲高甚商店にて 燻し蒸籠を前に、店主の高橋さんと。

★次回:2014年7月16日(水) 「相模湾の民俗29 大磯の漁業を学ぶ」  

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