食の民具たち 平成16年冬季特別展 (2 桶と甕)

桶と甕

図録 平成16年1月発行

 飲料水は井戸から汲み上げました。古くは釣瓶井戸で、竹竿の先に釣瓶桶を提げて水を汲みました。その後、ポンプ式の井戸も用いられ、昭和30年代に簡易水道が引かれると井戸を使う家は減りました。井戸端では洗い桶で野菜を洗ったり、鍋や釜を磨いたりしました。釣瓶で汲んだ水は両手桶やブリキのバケツにあけ、土間の水甕へ運びました。
 かつては暮らしの様々な場面で桶や樽が用いられていました。食生活に関するものだと、四斗樽醤油樽漬物桶洗い桶などがあります。四斗樽は味噌や漬物の貯蔵に用いた大型の容器です。味噌造りは、まず麹作りから始めます。大麦を蒸して筵に広げて覆うか、麹蓋という木箱に入れ、暖めて発酵させると三日くらいで白い麹ができ、塩を振って発酵をとめます。大釜で大豆を一昼夜煮て、半切り桶にあけて素足で潰し、麹と塩と大豆の煮汁をヘラで混ぜて四斗樽に詰め、蓋をして貯蔵しました。このとき、樽の底に干した大根を詰めて味噌漬けにしました。また、沢庵漬けにも四斗樽を用いました。
 醤油は味噌よりも手間がかかり、醤油絞りの職人を頼まねばならないため、早くから購入するようになりましたが、戦前まではほとんどの農家が自家製の醤油を造っていました。小麦を炒って挽き割り、大豆を煮て、小麦と混ぜて筵や麹蓋に寝かせます。麹ができたらモロミ桶に水と塩、醤油麹を入れて仕込み、カイ棒という道具で毎日かき混ぜ、一年後に醤油を絞ります。醤油絞りには、大釜へモロミを汲み入れる、醤油絞り用の舟、モロミを入れて舟に並べる、絞った醤油を貯める四斗樽、片手桶、大釜で醤油を煮るときに出る泡をすくう泡取り器など独特の道具が用いられました。
 梅干しを漬けるにはを用い、ラッキョウは醤油樽や焼酎甕などに漬け、転がし漬けといって時々足で樽を転がすとよく浸かるといわれました。塩はカマスに入れて保存しましたが、日常使う分は味噌も同様に小出しにして、蓋付きの小さな甕に入れました。精白した米は堅牢な作りの米櫃に入れ、で計量して毎日使いました。昭和になるとブリキ製の円筒形や四角形の缶が米櫃として使われました。自家製のお茶はに入れ、蓋をして密閉するか、大きな茶箱で保管しました。

桶と甕(おけとかめ) 釣瓶(つるべ) 提げて(さげて) 竹竿(たけざお) 水甕(みずがめ) 四斗樽(しとだる) 醤油樽(しょうゆだる)  漬物桶(つけものだる) 麹蓋(こうじぶた) 半切り桶(はんぎりおけ) 蓋(ふた) 沢庵(たくあん) 絞り(しぼり) 炒って(いって) 溜(ため) 舟(ふね) 甕(かめ) 焼酎甕(しょうちゅうしょうちゅうがめ) 米櫃(こめびつ) 枡(ます) 茶壺(ちゃつぼ)