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縄文の海を語る化石(2)−平塚市徳延−
■徳延で貝拾い
1999年、平塚市が工事していた徳延ポンプ場の建設にあたって、掘削した残土の中に、数多くの貝化石が産出しました。その化石を同定をし、それらの化石からかつての環境を推定することができました。産出した化石は80種類に及び、外海の影響下が強い潮間帯ないし10mほどの砂底に棲むものが70%を占めていました。5000〜6000年前、平塚市徳延付近は、そのような環境にあったのでした。
この化石が散在しているのをみつけたのは、市内在住の方で、河内川のサイクリングロードを自転車で走っていて気づかれ、博物館へ連絡くださいました。博物館では、すぐに現地に出向いて、下水道建設課とポンプ場工事事務所に連絡し、現場を見せていただきました。
ちょうど10m程掘り終わり、ポンプ場の骨組を組み立てているところで、周囲に掘り出した砂が積み上げられており、多くの白い貝殻が散在していました。工事現場内なのに、まさに砂浜のごとく、同行した相模川の生い立ちを探る会会員と1時間ほど貝拾いに精を出しました。小さい貝殻は目に付きにくいので、砂や砂利も一緒に袋に入れて持ち帰りました。
■資料の整理
博物館へ帰ってから、今度は、バケツ一杯持ち帰った貝殻の入った砂を、水の中で篩い分けしました。2mmの篩いに残った小さな貝殻は、乾燥してからひとつづつ、手作業で選び出し、小箱に分けていきます。こうした作業も、地質ボランティアの人が何日も行ってくれました。
その次は貝殻に名前を付ける同定です。これが大変で時間のかかる作業なのです。最終的には、貝殻は二枚貝50種類、巻貝23種類の合計73種類にのぼり、他にサンゴ・ウニの棘や殻も見つかりました。そして、環境解析をすると、この貝殻は、縄文時代の初め〜中頃にかけての温暖期に、海が平野域まで入っていた頃のもので、徳延付近が水深10m以下の細砂底からなる浅い海であったことを物語っていることがわかりました。
そのような現場に出会ったときは、是非、博物館へご連絡をお願い致します。
文献:森慎一・鈴木茂(2004) 平塚市博物館研究報告 27号
▲徳延ポンプ場の建設現場。背後に掘り出されて積まれた砂が見える。 | ▲掘りださられた砂にはたくさんの貝殻が含まれていた。 |
▲徳延ポンプ場から見つかった縄文時代の貝化石。 | ▲五領ヶ台貝塚から出土した貝類。 |
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