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最終更新 2004年3月

海辺の石ころ


石ころを調べる
 湘南海岸は砂浜海岸が多く、石ころ(礫)が打ち上げられているところは余り多くはない。しかし、酒匂川河口から大磯町西小磯の海岸にかけては偏平な円磨された礫を良く見ることができる。平塚や茅ヶ崎の海岸でも、注意してみると、砂浜の間に部分的に礫が堆積していることがよくある。
 博物館の普及行事である「相模川の生い立ちを探る会」では、数年来、海辺の石ころ調査を実施し、石の形・大きさ・種類などを調べてきた。
 まず、石の形に注目しよう。海辺の石はハンバーグやコロッケのような平たい形をしたものが多いのに気づく。寄せては返す波の影響で偏平な石になる。こうした石が”水切り”の遊びには最適の石となる。丸さも角が良くとれている。河原の石がオムスビ形で、やや角がとれている程度なのに比べて対照的だ。
 石の大きさを見ると、平塚海岸から国府津海岸に向かい次第に大きさが大きくなる。これは湘南海岸の礫が酒匂川より運ばれ、沿岸に沿う流れによって東へ運ばれていることを示す。
 石の種類はどうだろうか。酒匂川も相模川も丹沢山地より流れているが、流域の地質を反映して、礫の種類がやや異なっている。酒匂川では相模川ではみられない緑色の薄く剥がれるような結晶片岩類(圧力により押しつぶされてできた変成岩)や、灰色の箱根火山の溶岩(安山岩)が認められるのに対して、相模川では、丹沢山地の北側にある小仏山地からもたらされた茶色っぽい砂岩や黒色の粘板岩類(固結した泥岩)が見られるのが特徴である。礫の大部分は両河川に共通の、緑色から青緑色の凝灰岩類(海底火山の火山灰が固化したもので、グリーンタフと呼ばれる)が極めて多く、ゴマシオ状のトーナル岩類(従来は石英閃緑岩類と呼ばれ 広くは御影石の仲間)も白いので良く目立つ。緑色凝灰岩は丹沢山地一帯に広く分布しており、かつて丹沢が海底火山であった名残りである。トーナル岩は丹沢湖より上流の西丹沢に広く分布している。また、富士火山の溶岩(玄武岩)は火山ガスの抜けた跡が特徴的で、凹凸のある黒灰色ないし茶褐色の岩石なので良く目立つ。相模川では上流の山梨県大月市まで溶岩として流れている。このように海辺の石ころからもそれぞれのふるさとを知ることができる。
 ところで、ゴマシオ状のトーナル岩(石英閃緑岩)礫について注目すると、礫の大きさも量も酒匂川へ近づくにつれ、次第に増加することがわかる。相模川よりもたらされた小仏山地の砂岩や粘板岩礫は花水川以西で急に減少する。従って、国府津から大磯海岸にみられる礫は酒匂川により運ばれた河原石が東へ運ばれたものと考えられる。花水川以東では相模川より運ばれた礫が酒匂川系の礫に混在するようになる。茅ヶ崎海岸より東では礫はほとんど目立たなくなってしまう。このように、石の種類や割合からは、沿岸の海の流れや石のふるさとを知ることができる。

平塚海岸の礫の堆積 礫を調べる
▲平塚海岸に打ち上げられた礫。三角形状に張り出した高まり(ビーチカスプ)を作る。 ▲礫を調べる「相模川の生い立ちを探る会」の会員
国府津海岸の海浜礫アップ 1m枠を作る
▲国府津海岸に打ち上げられた礫(赤糸は10cm方眼) ▲礫調査のため、1m四角の枠を設定する。
礫の大きさを測る データを記入する
▲ごま塩状の石だけ選び、礫径を測る。 ▲読み上げた礫の寸法を記入する。
礫を分類する 礫の並びを調べる
▲分類された箱根溶岩礫(手前)と富士溶岩礫(後側) ▲河床の礫の並ぶ方向を計ると、流れの方向がわかる。
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