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カクテルされた砂
■砂と石ころの行方
砂は、どこから生まれ、どのようにして運ばれて、海岸を作っているのでしょうか。砂粒は何からできているのでしょうか。石ころと砂はどんな関係にあるのでしょうか。
山北町谷峨の酒匂川に、御殿場方面から流れる鮎沢川と、西丹沢から流れる河内川との合流点があります。この河原を見ると、鮎沢川の河原は真っ黒な富士溶岩ばかり目立つのに対し、河内川の河原はごま塩状のミカゲ石(トーナル岩という)と、緑色をしたグリーンタフからなります。その下流の谷峨駅付近では、それがミックスされて、様々な石ころを見るのに最適です。河原に見られる石ころ(礫)は、山が隆起することにより浸食され、上流から下流へ運ばれ、海へ達します。酒匂川や相模川は河口まで礫を運び、特に酒匂川は、相模川よりも急勾配のため、大きな礫を多量に海まで運びます。そして、酒匂川河口に達した礫は相模湾岸の沿岸流によって、東へ平塚方面へと運ばれていきます。国府津海岸では礫浜ですが、二宮付近からは砂浜となります。
■カクテルされた砂
砂は、上流に露出する岩石が削られて作られたり、地表が風化して生じたり、火山からの噴出物が空から降ってきたりして生まれます。したがって、川の上流に分布する岩石の壊れた岩石片からなる砂が大部分を占めますが、花崗岩の壊れた結晶ばかりの砂・火山灰から洗われた結晶からなる砂もあります。
相模川流域・酒匂川流域の砂は、大きく5つの供給源を持っています。それは、A丹沢山地のグリーンタフ砂・B小仏山地の頁岩砂・C富士の溶岩砂・D西丹沢の花崗岩砂・E箱根火山の火山灰の砂です。これらの5つの給源を持つ砂が、下流に行くにつれて、その場所独自の割合でブレンドされ、現在河原で見る砂になります。したがって、砂はいくつかの原酒をブレンドしたカクテルと言うことになります。
そのブレンドの割合は、河原の石ころの組成と同じと思われがちですが、そうでもありません。相模川では小仏山地の頁岩は破砕されやすく礫には少ないものの、砂には多量に含まれています。酒匂川では、弥生時代に流れた富士山からの泥流が河口まで達しているため、河原の砂には富士溶岩の砂が極めて多く見られます。
■果てしない旅路
こうした砂は、河口に達し、沿岸に運ばれると共に、荒天の時には相模湾底に運ばれます。相模湾は、駿河湾・富山湾と共に水深1000mに達する深海を持っています。酒匂川・相模川から運ばれた堆積物は一気に深海へ運ばれ、相模トラフという海盆に堆積します。この相模トラフは、2つのプレート境界であり、南のフィリピン海プレートが沈み込んでいる場所です。そのため、相模トラフに堆積した堆積物は、フレート境界で本州側に押しつけられて、海底の高まり(海丘)となっていきます。大磯丘陵や三浦半島は、かつて深海底であったところが、本州側に押しつけられて、陸域になったものです。したがって、山から運ばれた砂は深海に達し、そしてまた山へ戻っていくことになります。丹沢山地や関東山地はもともと海底で生まれたものであるので、海で生まれ、山になり、また海へ戻るともいえます。普段見慣れた砂も、そんな果てしない旅路を繰り返していることになります。
▲谷峨の酒匂川河原にみられる様々な石を観察。右写真の下流で、2つの河川からの礫がミックスする。 | ▲鮎沢川(下側)と河内川(左側)が合流し、酒匂川となる。2つの河原の色調が異なることに注目。 |
▲酒匂川から運ばれた海浜礫が東へ移動して堆積した砂礫の打ち上げ(平塚海岸) | ▲原酒にあたる5つの給源の基の砂。岩石の種類が異なり、色調や丸さがそれぞれ異なる。 |
▲海底に堆積した海底火山起源の堆積物が、プレート運動により本州に付加して直立した丹沢の地層(津久井町 早戸川) | ▲河原や海浜に見られる砂は異なる供給源の砂がカクテルされている。 |
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