ガイドブック 星空博物館 (第3章 太陽系の星たち)

火星の地形 探査機が見ると

平成15年3月発行


火星表面 NASA/JPL
 火星にはいままでたくさんの探査機が飛んでいきました。
1960年から70年台、アメリカとソビエト(当時)は競って太陽系の惑星に探査機を飛ばしました。始めは火星のすぐそばを通り過ぎるだけの探査機でしたが、後に火星の人工衛星になったり、火星にランダーとよぶ着陸船を下ろしたり、ローバーと呼ぶ探査車を送り込むようになりました。
 初めて探査機が火星を写した写真は、月の表面のようなクレーターに覆われたものでした。火星も月と同じような地形の星か、と思われました。しかし、だんだん火星全体の地形を写しだされるようになって、火星の本当の姿がわかったのです。特に、マリナー9号が撮影した峡谷は地球のグランドキャニオンを思い起こさせる大峡谷で、以来、マリネリス峡谷と呼ばれるようになりました。また、巨大な火山が並ぶタルシスと呼ぶ台地や、太陽系最高峰の火山、オリンポス山の威容がわかった時、また、いかにも大洪水が流れ下ったような谷の地形を発見して、いったい火星はどんな進化をしてきた星なのか、多くのなぞが浮かび上がりました。
 また、水が流れた痕や海があったかもしれないとなると生物が発見できるかもしれない、という期待が高まりました。バイキング1号、2号から送られてきた画像から、火星全体の克明な地形図が作られました。火星も地球と同じようにその地質の特徴が調べられ、成因を推理できるようになってきたのです。バイキングのランダーはクリュセという火星の洪水によってできたとみられる氾濫原に軟着陸して、火星の地上の風景を映し出しました。そこは、荒涼とした砂漠のような風景でした。
 1997年にはマーズパスファインダーがアレス谷に軟着陸し、ローバーが火星表面を動いて、X線放射分析機などを使い直接岩石を調べました。火成岩の一種、玄武岩的な特徴を持つ岩の見つかったり、水が流れた痕のような地形が見つかったりしました。


火星表面にのびるマリネリス峡谷 NASA/JPL