ガイドブック 星空博物館 (第3章 太陽系の星たち)

火星の地形 望遠鏡で見ると

平成15年3月発行

 火星は太陽の光を反射して輝いて見えます。明るさの割に小さな惑星なので高い倍率を必要とします。口径10cm程度の小型の望遠鏡でも200倍くらいかけて見たいものです。望遠鏡で見ると、まず目に付くのは、北や南の極の部分が白く輝いて見える、極冠と呼ぶ地形が見えます。時にぼやけたり、はっきりしたり、地球の上空の空気の流れによって火星からの光がちらつくため、火星の像が踊ってしまうのです。火星全体はオレンジ色に見え、その中に黒っぽい色の模様が見られます。これらの模様を辛抱強く眺めていると、細かな形が見えてくるようになります。そして、これらがすじ状に見えたり、斑点状に見えたりするのです。

スキャパレリのスケッチ

火星の地形(アンチニアジの地形図に加筆)
 19世紀終わりから20世紀はじめにかけて、火星を望遠鏡でスケッチして観測をしていた時代は、いわゆる運河が見えるかどうか、といった論争が行われ、それが火星に知的な生命がいる、というような考えにもつながっていきました。
代表的な地形は、名前が付けられ、火星面の名所になっています。おおまかには明るいオレンジ色に見える地形は大陸、暗く見える地形は海や水路と見なされていました。大シルチスは火星面で最も有名な模様です。南を上にして見る望遠鏡では、逆三角の形に見えます。その南(上)にまるく見えるヘラスも目立ちます。東に目を移すと、経度0度、子午線湾と呼ぶ独特の爪のような地形が東に延びています。その先がマーガレット湾、一つ目のように見える太陽湖が並びます。北半球の模様は以外と目立たず、アキダリアの海、ユートピアといった暗いもようがわかりやすいところです。
 極冠は大接近の時期は南極冠が見やすく、また、だんだん消える様子が見られます。北極冠は反対に大接近後中接近時から小接近の時期にかけてが見やすくなります。

火星の中央面経度
 火星を見るときに、いま、どこを見ているかを知った上で見ると、地形の様子がわかりやすくなります。火星面の真中がどのあたりになっているか、は火星の中央面経度を調べることでわかります。この数値は理科年表や天文年鑑、天体観測年表などで調べたり、天文ソフトを使いパソコンで調べることもできます。

火星の代表的な地形