ガイドブック 星空博物館 (第2章 太陽と月の現象)

太陽面をよぎるもの

平成15年3月発行


水星の太陽面経過(1993年11月) 矢印の先に水星がある

 太陽の手前を天体が通ると、それはシルエットになり太陽をかくします。日食は月という近く大きく見える天体が太陽をかくすものです。月以外に、太陽の手前を通る天体といえば、内惑星の金星と水星があります。これらを、それぞれの「日面経過」または「太陽面経過」などと言います。
 このうち水星の日面経過は数年に一度起きます。このとき水星の見かけの大きさは太陽の150分の1程度なので、望遠鏡で見ても、太陽面上では黒く丸い小さな点のようなイメージになります。それが時間とともに移動して行くさまが観察できます。最近では2006年11月9日に起きます。
 金星の太陽面経過はめったに起きない現象です。最近では2004年6月8日、その次は2012年6月6日になります。逆にさかのぼると前に見られたのは1882年で、122年も前になります。
 太陽面経過時の金星は太陽の30分の1ほどの見かけ直径があります。望遠鏡なら黒く丸いイメージが見られるはずです。
 もっとも、これは太陽を観察するのと同じですから、太陽観察のページで説明したように、望遠鏡では太陽像を紙に投影する方法で観察しましょう。直視用のフィルターは必ず太陽専用のものを使って下さい。
 金星の太陽面経過は1874年(明治7年)にも日本で見られ、アメリカ、フランス、メキシコ等諸外国の観測隊が、長崎、神戸、横浜などに訪れました。横浜紅葉坂の神奈川県立青少年センター前に、これを記念した碑が建てられています。青少年センターにはプラネタリウムと観測ドームがあり、神奈川の天文のシンボルとなっていましたが、2003年耐震工事を理由に閉鎖されてしまいました。


金星日面経過(金星過日)の碑