ガイドブック 星空博物館 (第1章 観察の前に)

星がきれいに見える夜

平成15年3月発行

 ふと見上げると、思いの外たくさんの星が輝いていた・・私たちが「いま、ここに望遠鏡があったらなあ」と感じるのは、いつもそんな夜でしょう。
星は曇っていては見えません。また、同じ晴れの夜でも、よく見える日と、ぼんやりかすんであまり見えない日があります。

遠くの景色までくっきり見えるこんな日は、星もきれいに見えそう

星が明るくたくさん見える夜

 市街地でも、ふだんより星が多く鮮やかに輝く夜があります。空を濁らせるのは大気中のチリや水蒸気です。そこで、これらが少ない、次のような時に「美しい星空」が現れることになります。
★雨上がりの晴天日
 空をにごらせる水蒸気やチリなどが雨に掃除されて透明度が高くなります。台風後や、夏の夕立の後など。
★冬の晴天日
 乾燥した、大陸からの高気圧におおわれて太平洋岸の冬は乾燥し、水蒸気が少ない好条件の日が多くなります。
★風の強い日
 風のないよどんだ空よりは透明度が高くなるでしょう。星座を見たり、淡い星雲を双眼鏡で眺めたりするには、このようなお天気の日が最適です。


気流が良い日の土星の写真

月や惑星を望遠鏡で見るのに適した日

 ところが、月や惑星を望遠鏡で眺める場合には、こうした、見た目の「美しさ」とはちょっとちがった事情があります。月や惑星はそれ自体明るいため、多少透明度が低くてもそれほど問題にはなりません。そのかわり、高倍率で細かな模様などを眺めるので、空の気流が星の像を揺らしたり、乱したりすることが最大のさまたげになります。土星の環などがくっきり見られるのは、むしろ空気のよどんだ、星がかすむような夜だったりするのです。
 そんなお天気に出会いやすいのは、関東地方では、春から夏です。しかし、秋や冬も、天体が高くなれば気流の影響を受けにくくなるので、あきらめることはありません。
 星を見上げたとき、またたきが激しいと感じる夜は、気流が激しく、惑星観察にはよくありません。じっと、静かに光る夜が好コンディションなのです。
 付け加えると、気流は空だけでなく、暖かい空気と冷たい空気が接すると、近くでも起きます。暖房器具や部屋の窓などにも注意しましょう。それから、室外に出したばかりの望遠鏡は、これも温度差のために筒の中に気流が発生します。「よく見えない」と思っても、30分くらい待つとだんだんなじんで良くなることがあります。


気流が悪い日の土星の写真