自然探偵と「むかご」でふえる植物 (2007.9)
博「ねえ、探偵。夏休みからずっと気になっていることがあるんだけでど、いいかな。」
探偵「何かおもしろいものでも見つけたのかい。」
物子「どうせ、たいしたことじゃないんでしょ。」
博「うるさいから、ちょっとだまってて。いなかのおじいちゃんちに行った時の話なんだけど、オニユリっていうのかな、庭に赤い花の咲くユリがたくさんあったわけ。それで、ぼくが気になったのは、オニユリの葉っぱのつけねに、茶色いコブみたいなものがついているんだ。おじいちゃんに聞いたら、ぽろっとこぼれて芽を出すもんだ、呼び名は知らん、だって。」
探偵「なかなかいいことに気づいたじゃないか。それはオニユリの"むかご"だね。むかごというのは、植物の葉の付け根なんかにできる芽がふくらんで、そのまま落ちて芽を出すようになったものをいうんだ。」
物子「むかごなら、私知ってる。ヤマイモにできるんじゃないの。おいしく食べられるのよね。」
探偵「その通り。ヤマイモにできるのもむかごだね。今日は、ほかにどんな植物にむかごができるのか、見てみようか。」
博「一つ疑問があるんだけど、植物はふつう花が咲いて、それから実ができてふえるよね。むかごでふえられるなら、花なんか咲かせなくてもいいんじゃないかな。」
探偵「するどい質問だね。むかごの場合は、親の体の一部がこぼれて芽を出すわけだから、親とまったく同じ性質の子どもになる。つまり、クローンができるというわけだ。クローンばかりでふえていくと、ちょっと環境が変わったり、病気が流行したりした時に、全部が同じ性質を持っているから、いっせいに死んでしまう危険があるんだね。ところが、花からできた実の場合は両親の性質をいろいろなていどにうけつぐから、一株一株が少しずつ違った性質を持っていて、そうした時にどれかが生き残ることが可能なんだ。植物がむかごばかりにたよらずに、花を咲かせるのは、そんなわけがあるんだよ。もう少し大きくなって、遺伝子(いでんし)ということを習うと、このことがもっとよく分かるようになるよ。」
物子「花や実によらない増え方は、むかごだけなの?」
探偵「それもいい質問だね。植物では、地下茎(ちかけい)を伸ばしてその先に新しい株を作ったり、クローンを作りながらふえていくことも多い。動物では、そんなことはないけどね。」
オニユリの花とむかご |