ムクノキ・サクラ類・モチノキ・ムラサキシキブなどの丸い木の実は多くの鳥の餌になっています。ヒヨドリやツグミはこれらの実を丸飲みにしますが、消化できない硬い種子は鳥の糞に入って出てくるので、結果的に種子が鳥によって運ばれることになります。ムクドリでは、種子を口から吐き出すことが多いのですが、その場合も種子を運ぶ役目には変わりありません。
これらの実は、赤などの目立つ色を持っていること、柄の先についていてつまみ取りやすいこと、球形で毛もなく飲み込みやすいこと、鳥の口に入る適当な大きさであることなど、鳥に食べるのに都合のよい形をしています。それは、鳥は食物を得、植物は種子を運搬してもらうという相互進化の中で発達してきた特徴と考えられています。鳥の腹を通過した方が発芽率が高くなることが確かめられている植物もあります。 | |
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45 センダンを食べるヒヨドリ |
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P46 ★種子を食べてしまう鳥 ところが、鳥の中にはこうした植物の「期待」に反する実の食べ方をする種類がいます。イカルはサクランボを食べる時にまず果肉をむき、中の種子を丈夫なくちばしで割ってその中身を食べてしまいます。イカルが採餌した木の下に行くと、半分に割れた種子がたくさん落ちています。植物にとっては、肝心の部分を食べられてしまうわけです。 ホオジロ類やスズメのような「種子食」の鳥も草の実をつぶして食べてしまうので、種子を運ぶ役目をすることはありません。 カケスの場合は、ドングリを割って食べるので、植物にとっては都合の悪い相手なのですが、後で紹介する貯食をするために、ドングリの散布に一役かっています。鳥と植物の関係には非常に複雑なものがあるのです。 |