野鳥の観察 (7.休息と睡眠)

集団のねぐら 2

ガイドブック14 野鳥の観察 平成7年3月発行


92-1 干潟を歩くハクセキレイ
★ハクセキレイの1日
集団ねぐらを持つ鳥の代表として、ハクセキレイとカラスの1日の動きを紹介してみましょう。
ハクセキレイは日の出前後にねぐらから飛び立ち、昼間の採餌地に向かいます。馬入橋のねぐらでの調査によると、ねぐらと採餌地は最大で20km程度離れており、片道30分くらいの通勤をしている鳥がいるわけです。午前中のハクセキレイはだいたい単独で生活し、近くに別の個体が近づくと、つっかかって追い払うこともよくあります。ただし、堆肥をいれた畑のように条件のよい餌場では数羽が近くにいることはあります。
午後3時頃になると、川岸などに小さな群れができ始め、水浴びをしたり羽づくろいをするような行動が目立つようになります。そして、日没30分くらい前には数羽から数十羽の群れで飛び立ってねぐらに向かいます。早めにねぐらに帰った鳥は、近くに川岸などに降りることが多く、そこでまた水浴びや羽づくろいをして過ごします。徐々に橋桁にとまる個体が増えてくると、何かのはずみに一斉に舞い上がってあたりを飛び回ります。そうした行動を何回か繰り返しながら、ねぐらに落ち着いて静かになります。


92-2 橋桁のねぐらのハクセキレイ

92表 馬入橋のねぐらからの分散

★カラスの1日
カラスは午前中から数羽〜数十羽の群れで行動しています。午後になると採餌よりも、水浴びや羽づくろいが目立つようになり、早い時間から群れの個体数が多くなっていきます。カラスの場合は、ねぐらに向かう移動の中間集合地点が決まっているようで、林、空き地、河原などで毎日決まった時間に群れが見られる場所があります。そして日没が近づいた頃に一斉に飛び立ってねぐらに向かいます。ねぐらにつくと、近くの高圧線の電線のような見晴らしのよい場所にずらっと並んでとまり、徐々にねぐらの林に入っていきます。時折群飛をするのもハクセキレイと同じです。

★集団ねぐらの役割
こうした鳥たちがなぜ集団でねぐらを持つかについては、いろいろな説明がされてきました。初めの内に考えられて理由は、限られて安全な場所に結果的に集まる、多くの個体が集まると暖かいといった説でした。しかし、これらは必ずしもあてはまらないことが分かってきました。大勢が一緒にいると、外敵に気づく目が多く、また襲われても少ない犠牲で多くの個体が逃げ延びられるという、安全性に着目した説もありました。また、新しい仮説として情報センター説というものがあります。これは、餌が十分とれなかった鳥が次の日に、餌が十分とれて元気よくねぐらから飛び立っていく鳥についていくことで餌を得ることができ、結果として情報が伝わっているという説です。この説を支持する調査結果もありますが、最終結論というにはいたっていません。

★飛び立ち
ねぐらで夜を過ごした鳥たちは、早朝、日の出に前後してねぐらを飛び立っていきます。情報センター説によれば、飛び立ちの時にぐずぐずしている鳥と、さっと飛び去る鳥がいるはずです。そんなようすにも気をつけて観察してみましょう。