漂着物といえば、ヤシの実を思い浮かべる人が多いことでしょう。島崎藤村の作詞になる「名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子の実一つ・・」という歌はあまりにも有名ですが、これは民俗学者の柳田国男が愛知県伊良湖岬で拾ったヤシの実に基づいていると伝えられています。 それでは、平塚にもヤシの実が流れ着いたことがあるのでしょうか。ここに3個のヤシの実の写真がありますが、左の一つは平塚海岸に打ち上げられていたもの、右の2個は屋久島で拾ったものです。屋久島の二つは、表面が剥げ、果皮の繊維が毛羽だって見えていて、いかにも長く海に浮かび、海流に運ばれて来たことを示しています。ところが、平塚のものは表面がすべすべした状態のままで、海に出て間がないことを示しています。このことから考えると、平塚で見つかったヤシの実は、南方から黒潮に乗ってきたものではなく、近くで捨てられたものの可能性が高いということになります。最近は、果物屋さんでヤシを売っていることも多いので、そうした物が出所なのでしょう。 さて、ヤシと一口に言っても、亜熱帯から熱帯に多くの種類が分布しています。海流に運ばれる実として有名なのは、その中のココヤシという種類で、ココナツの原料となるものです。フィリピンやインドネシアの島々には、どこでも海岸近くに背の高いココヤシが生えていて、南方らしい景観を作っています。 房総半島や伊豆大島には、確かに黒潮の運んだココヤシの実が流れ着いた記録がありますから、いつの日か、平塚海岸にも長い旅をして表面がぼろぼろになったヤシの実が漂着するのを楽しみに待つことにしましょう。 | |
海岸で拾ったココヤシの実(左:平塚海岸 中・右:屋久島) |
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