平塚のお祭り −その伝統と創造− (I)

 打法

平成17年夏期特別展図録 平成17年7月発行

 太鼓を鳴らすには、叩き方にコツがいる。腕を高く持ち上げてストロークを長く取り、素早くバチを振り下ろし手首を利かせて叩くと音が抜ける。豊田や中原のように、肩の上まで肘を持ち上げて叩く囃子太鼓は他所ではあまり見かけない。同系統の三ノ宮比々多神社もバンザイをするように腕を高々と持ち上げ、ためを利かせて振り下ろす。豊田豊中はイスから腰を浮かせ、体重を乗せてダイナミックに鳴らす。
 鳴らすにはやはり腕っ節がものをいう。とくに競り合いは目一杯に叩くので体力を消耗し、叩き手が早めに交替する。豊田西町では身体ができていないと良い音が出ないと言い、ダンベルを持って散歩したり、ジョギングしたり、祭りが近づくと煙草を控えたり、カケヤで太鼓を叩く時も手首を利かせたりと、身体作りにも励んでいる。
 平塚太鼓の叩き方の特徴は、腕の振りが大きいことと、バチを平らに打つことである。ウラッポで打つと良い音がせず、平らにビシッと打つと響きが良い。この打法だとバチのコバを打つことがあり、コバに当たるとバチが折れやすい。また皮を強く締めるほど衝撃が大きく、バチが折れやすくなる。折れたバチが刺さって失明した方もいる。
 このように、平塚の囃子はバチをたくさん折る。折れなくても、豊田西町では一年前のバチは使わない。ざらついたり、へこんだりしていると、革を傷つけるし、折れやすくなるからである。したがって、太鼓の革とともに、バチの消費量もまた、平塚周辺の囃子太鼓は群を抜いて多い。
 また、コバを打つので太鼓の革も痛めやすい。ツケは向きを変えて叩けるが、オオドは金具に紐を通して結わえるので、いつも同じ場所を打ち、数年で皮を張り替えねばならなくなる。水平打ちは革の消耗が激しい一因になっている。