平塚市は馬入、田村、大神を除いて同系統の囃子太鼓を伝える。地域によって叩き方や曲目、演奏スタイルに微妙な違いはあるが、系統としてはひとつにまとめることができる。
平塚の囃子太鼓を人によって相模囃子や平塚囃子とも呼ぶが、小田原囃子や鎌倉囃子のような定まった呼び名ではない。伊勢原市、秦野市、中井町井ノ口、大磯町、二宮町の一部など、旧中郡一帯に共通する囃子太鼓である。 田村囃子の太鼓はよそから「ぼんぼこ太鼓」と言われ、田村は平塚の太鼓を「カンカラ太鼓」と呼んでいる。「カン、カン、カン」と甲高く硬質な音を鳴らすのが平塚太鼓の特色である。そうした音を出すために、締太鼓の革を限界寸前まで締める。締めている最中に革がボコッと破裂したり、叩いていないのに急に風が吹いてきたら破けたとか、大太鼓を一年間毛布にくるんで保管しておき、お祭りで出そうと思って広げたら革が破けていたとか、革を破いた逸話には事欠かない。 革は、周囲の縫い目が破れやすいので、強烈に鳴らす所は縫い目にボンドを塗って締めるが、そうすると今度は太鼓の胴に負担がかかり、胴にヒビが入ってしまうことすらある。 北金目神社の例祭には、海老名市の広崎太鼓店が毎年ご祝儀を持ってくるという。革をたくさん破いて、何枚も購入する最高のお得意さんなのである。広崎太鼓店も、大神の清水屋太鼓店も、浅草の宮本卯之助商店も、異口同音に平塚周辺は関東一太鼓の革の消耗が激しい所だと語る。もしかしたら日本一であるのかもしれない。 豊田では破かなくても毎年数枚の革を購入している。新しい革の方が鳴るためである。昨年の革はギリギリまで締めて伸びきっているので、鳴りが悪くなるという。平塚の締太鼓を見ると、革を強く張るので中がぷっくりと膨れている。また、真っ白できれいな革を使う。 |