平塚のお祭り −その伝統と創造− (I)

 田村ばやしの笛

平成17年夏期特別展図録 平成17年7月発行

 田村では、大太鼓は尺四(一尺四寸)で、最近は尺五も使う。径が広く、胴に丸みがあるので低音が響く。締太鼓は革を緩く張るので何年も使える。大太鼓も締太鼓も、太鼓本来の丸みのある音である。大太鼓のバチは太いものを用い、握りが太く先端が細くなる形状である。太鼓の叩き方は力強く豪快である。
 笛は四本調子を使うことが多い。横宿の重田鉄五郎さんは田村の渡しの船頭をしていた人で、笛の名手だった。渡しで吹くと馬入まで音が聞こえたという。鉄五郎さんが明治の頃に愛用した笛が横宿に残されており、横宿で田村ばやしの全曲を吹ける人が保管保持し、後世に伝えることになっている。
 鉄五郎さんの弟子の落合福次さんは現在の吹き手の師匠である。笛は伝承が難しく、全曲を吹ける人は各町内に2〜3人しかいないという。
 横宿の亀井秀雄さんは、笛を自作している。材料は相模川の河原に生える女竹(篠竹)を使う。出たての竹は駄目で、3年以上経ったものを選び、伐って4〜5年寝かせて使う。火に炙って曲がりを直し、吹きながら調子を確かめて穴をあけていく。笛には吹き割れを防ぐために籐のツルを巻く。男竹(真竹)は遠音がするが、太いので肺活量が必要である。

重田鉄五郎氏愛用の笛


落合福次氏愛用の笛


亀井秀雄氏自作の笛