平塚のお祭り −その伝統と創造− (I)

 神輿の掛け声

平成17年夏期特別展図録 平成17年7月発行


 神輿担ぎの調子をとる掛け声は「どっこい、どっこい」や「どっこい、そーりゃ」のどっこい担ぎがほとんどである。だが昔から「どっこい」だったのは須賀の三嶋神社だけで、それも色々な掛け声のひとつに「どっこい」もあったという程度だった。銘々が好き勝手な言葉を掛けて担いでいたので変化があり、担いでいて疲れなかったという。その他の神社は「わっしょい」が基本で、田村では「よいさ」とも言った。中吉沢では夜になると、「明日はねえぞ、今夜はあんど」と言った。寺田縄では三ノ宮比々多神社のような「よーとうさっせ、よいとこーりゃさっせ」で担いだ。真田は「よいやーさー、こらさー」で、現在も宮出と宮入時だけ「よいやーさー」で担ぐ。
 それが昭和50年以降、各地に神輿保存会が結成され、他地域との交流が活発になると、いっぺんにどっこい担ぎへ変わっていった。
 「どっこい」の他に、「元気がねえぞ」もよく聞かれる。鳥居をくぐるなど神輿を下げて通る時は「よいと、よいと」を使う。子供神輿は今も大半が「わっしょい」で、真田は子供も「よいやーさー」、須賀は「どっこい」である。
 四之宮は甚句を唄わない代わりに、掛け声が充実している。「どっこい」が基本だが、「そーれ、そーれ」など別の言葉を随所に挟み、リズムの裏で調子をとることもあって変化に富んでいる。合いの手との絡みも絶妙である。音頭取りの鈴木さんは、「腹の底から声を出すこと」と、担ぎ手と呼吸を合わせるために「同じ歩調でステップを踏みながら歩くこと」を心がけているという。
 須賀の掛け声も迫力がある。ここはメガフォンをほとんど使わない。だから自ずと腹の底から声が出る。音頭取りだけでなく、担ぎ手や廻りの取り巻きも大声で合いの手を返すので、全体に活気がみなぎる。

須賀三嶋神社の神輿渡御  撮影 2004.07.18