食の民具たち 平成16年冬季特別展 (3 お勝手の道具)

笊と籠について

図録 平成16年1月発行

 竹製品は、プラスチックや金物には無い良さがある。第一に水切れが良いこと。プラスチック笊は、編み目は大きいが、水膜が張るので水切れは劣る。第二に熱に強いこと。プラスチックは溶けるし、金物は熱くなる。いずれの点でも竹笊が優る。第三に素材自体に通気性があること。長時間笊に上げておくと、プラスチックは直接触れた部分から悪くなる。第四に見た目の良さ。素材の竹自体が青々とし、多種多様の編み目も、使い手の気分を和ませてくれる。唯一の欠点に、強度の無さが挙げられるが、大事に使えば長持ちするし、縁が壊れたら近くの職人さんが直してくれた。作り手と使い手の顔の見える付き合いがモノへの愛着を育んだのである。
 竹は縦に何等分か(二の倍数)に割り、それを薄く剥いでヒゴを作る。ヒゴは皮付きの部分と身だけの部分とができる。見た目がきれいで、強度があるのは、皮付きのヒゴである。身だけのヒゴで編むと柔らかくなる。だから、接触して痛みやすい場所や、見映えを良くするには、皮付きのヒゴを用いる。ところで、通常の竹製品は、ヒゴの皮面を外側に向けて編む。これは強度と見映えのためでもあるが、それよりも竹の性質上、皮面を内側にして曲げるのは難しい。竹の性質を素直に生かして使えば皮面は外側に向くのが道理である。ところが、これに反したザルがある。写真50のソバアゲザルは内側に皮面を向けて編む。蕎麦を盛り食卓に並べる器だから、見映えを考慮したのである。また、皮面はスベスベしているので蕎麦がくっつかなくて良い。しかし、皮面を内側に曲げるのは難儀なのでシキの編み目に通しているだけで、マワシは別のヒゴを用いて編んでいるのである
笊と籠(ざるとかご)