食の民具たち 平成16年冬季特別展 (2 桶と甕)

水甕

図録 平成16年1月発行

 水甕は下部がすぼまり、口縁部が大きく開いた独特の形をしている。この形は柄杓で水を汲み出すのに都合が良く、下がすぼまっていると、底の方に貯まった水を汲み出しやすい。水瓶へは毎朝、お嫁さんや子供が井戸からブリキのバケツで往復し、飲料水から湯沸かし、煮炊き、洗い物まで、炊事で使う一切の水を水瓶でまかなった。普段は、甕に木の蓋をのせて埃が入らないようにしておいた。
 食器洗いは、浸けおき用とゆすぎ用の二つの洗い桶を置き、桶の中で行った。食器を洗った水や米のとぎ汁などは、流しの穴から外へ排出され、流しの裏側の地面に埋けた別の水甕に溜まる仕組みになっていた。排水用の水甕には風呂の排水も溜まるようになっており、この排水で下肥を薄めたり、そのまま畑の作物にかけたりした。排水を貯めておいて肥料に用いたのは、井戸と往復する労力をなるべく減らし水を大切に使った、地面に流しっぱなしにすると土地がしけるといった理由とともに、野菜屑やとぎ汁、人の垢などの混じった水に肥料分が含まれていたからである。

水甕(みずがめ) 柄杓(ひしゃく) 下肥(しもごえ) 垢(あか)